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後編

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 翌日、父親が知り合いの高い身分の家柄の人に相談すると、その人は協力すると返してくれた。

 それからの展開は早かった。

 高い身分の人がリュゼー家と話し合いを重ね、やがて、私に対して行われていたことが明らかとなる。コーラルの母親の罵倒行為、使用人たちによる虐め、すべてが世に出ることとなった。

 事実を明らかにできたのは、身分の高い人が協力してくれたからこそ。
 下に見られている私の家だけではできなかったことだと思う。

 リュゼー家の婚約者虐めの話が明らかになると、コーラルを含むリュゼー家関係者は批判の嵐に晒されることとなった。

 この一件により、リュゼー家は身分を剥奪された。領地を管理するに相応しくないから、という理由で。身分を失ってしまったリュゼー家は、あっという間に貧しくなっていく。貯蓄は多少あるようだったが、それもそんなに多くはないようであった。

 また、屋敷で働いていた使用人たちは、解雇された。
 リュゼー家に使用人を雇う余裕がなくなったからである。

 リュゼー家の屋敷で働いていた者たちは、再就職にも苦労することとなったようだ。他者を虐めるような人間だと世の人に知られてしまっているため、雇ってくれる場所がほとんどない。申し込んでも、リュゼー家で働いていたというだけで拒否されるとか。

 結局、数年が経っても、改めて働く場所を見つけられたのは少しの幸運な人だけだったそうだ。

 また、あの一件の後コーラルの両親が仲違いし、離婚に至ったという。

 コーラルの父親は一人になってもそれなりに暮らせていたようだが、多くのものを失った母親はそういうわけにもいかなかったようだ。家庭を崩壊させる一因を作った女、と呼ばれ、名誉も傷つけられて。社会的に酷い目に遭ったようだった。

 でもそれは仕方ないことと私は思う。
 あんな酷いことを繰り返してきたのだ、まともに幸せになれるはずがない。

 ちなみに、コーラルはというと、あの後工場に勤め始めたらしい。少しの賃金を貰い、一人細々と暮らしているそうだ。


 ◆


 あれから数年、今の私には夫と子どもがいる。

 夫はアルフォネリア家と同じような位の家の長男。晩餐会で知り合い、気が合いそうだったので二人で会うことを数回続け、段々親しくなっていった。刺激的な出会いではなかったが、彼といる時間が幸せであると感じ、やがて結婚に至った。

 家庭環境が似ている私たちは、お互いに不満を抱くこともあまりなく、穏やかな家庭を築くことができた。

 先月には一人目の子どもとなる長女も誕生。
 今は三人でのんびりと暮らしている。


◆終わり◆
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