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前編
しおりを挟む満月の夜、婚約者レッヂに婚約破棄を告げられた私は、死を選ぼうとした――しかしその選択は許されなかった。
「何してるの!?」
崖から飛び降りようとしていると突如背後から声をかけられて。
振り返るとそこには中型犬くらいの大きさのかたつむりのようなモンスターがいた。
「え……」
「駄目だよ! そんな危ないところにいちゃ!」
「放っておいてください、私はもう……」
刹那、モンスターは長い舌のようなものを伸ばし、それで私の胴体をぐるぐる巻きにした。
「きゃっ!?」
思わず出る悲鳴。
「死のうなんて罪だよ! 許されない! だからこっちへ戻ってきて!」
「う……く、苦しいです」
「もう死なないって約束できる!?」
「……します、しますから、離してください」
「仕方ないなぁ、じゃあいいよ!」
ようやく離してもらえた。
巻かれていたところには透明な粘液がこびりついていて、少々気持ちが悪い。
衣服のきれが湿ってしまっている。
言葉にできないような気持の悪さがそこにはあった。
だが粘液自体に害はないようではあって。
一応身体への害はなかった。
痛いとか、溶けるとか、そういう危険要素はまったくもってなかった。
「飛び降りたりしないでよ!」
「……はい」
「それで、何があったの? 話なら聞くよ?」
「いえ、結構です」
するとモンスターは急に接近してきて。
「聞くよ!?」
物凄い圧だ……。
「……話さないといけないやつですね」
「うん! 話して! 聞くよ聞くよ!」
「では……お願いします」
観念して、モンスターにすべてを話すことにした。
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