1 / 2
前編
しおりを挟む婚約者ウルディンの自宅の庭には畑がある。様々な野菜が植えられた本格的な畑だ。私もそこで採れたものをもらったこともあるがとても美味しかった。ただ、それとは裏腹に、その畑には少々残酷な面もある。というのも、害獣対策として、無数の罠が仕掛けられているのだ。それも、生きたまま大怪我だけさせて捕らえるという、残酷さを前面に押し出した罠で。情けなど欠片もない仕様のものだ。
これまで、血だらけになってしまっている小動物を何度も見てきた。
ただウルディンは可哀想とは欠片ほども思わないようで。
むしろ、罠に小動物がかかっているとニヤニヤしているくらいだった。
今日、私は、そのことについて彼に話をした。
もう少しましな罠に変えてはどうか? と。
だがその話が彼を激怒させる種となってしまって。
彼は烈火のごとく怒り。
凄まじい勢いで私をボロクソに言った果てに、「お前なんかもういい! 婚約は破棄だ! 消えろクソ!」と叫ぶような調子で言われてしまった。
こうして私は婚約破棄され捨てられたのだが――その帰り道、罠の一つにかかってしまっている白い蛇を発見する。
「……大丈夫?」
その罠は、前に外し方を見たことのある罠だった。
だから助けだすことにした。
解放しても遠くへ離してしまえば問題ないだろう、そう考えて。
「よし、これでもう大丈夫よ」
するとその瞬間、白蛇は巨大化した。
太くて大きな蛇となった。
『救ってくださりありがとうございます、お嬢さん』
「え……な、何これ……空耳……?」
『空耳ではありません、私の声です』
「声……」
『はいそうです。助けていただいたお礼、と言っては何ですが、これから貴女に幸せが多くあるよう祈っておきます』
「そ、そうですか……」
蛇が大きくなる、なんて現象、聞いたことがない。
『お嬢さんは今日婚約破棄されたのですよね』
「え、どうして知って」
『聞いていました、この耳で』
「凄い聴力ですね……」
『どうか安心してください。婚約破棄は不幸ではありません。幸せへの道ですよ、間違いなく』
「励ましありがとうございます」
それから数秒、蛇は空白に溶けて消えた。
何だったのだろう……?
思いながら、家へ帰った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
7
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる