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前編
しおりを挟む幼い頃は優しい母親だった。
でも私がある程度年を重ねるとそうではなくなってしまった。
彼女は私をことあるごとに否定し批判し、人ではないように扱った。
多分、娘である私が女性になり始めたことが気に食わなかったのだろう。
ことあるごとにいちゃもんのような言葉を投げつけ、容姿を批判し、馬鹿にするような言葉を父や他人がいないところでだけ繰り返して。
私を傷つけること、それが、母親にとってのすべてのようだった。
憐れな人だ。
娘を傷つけようとすることでしか幸せを感じられないのだから。
そんな母親は、私の一度目の婚約も、勝手に破棄に持ち込んだ。
彼女は私の婚約者であった男性に私の悪いところを言い聞かせた。
もちろん嘘も多い。
彼女は自分の心を満たすために私の悪いところを彼に話し続け、徐々に彼を洗脳したのである。
その結果私は彼から婚約破棄を言いわたされた。
悪いことは何もしていないにもかかわらず。
婚約破棄となったその日、私は心を決めた。
家から出て生きてゆこう――そう決心したのである。
そうして私は家から出た。
行くあてはなかった。
でもそれでもあのまま虐められ続けるよりかは良いと思ったのだ。
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