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前編

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 とあるパーティーにて、私は恋に落ちた。

 恋の幕開けはいつだって唐突だ。
 けれどもそれは圧倒的なもの。
 一度落ちてしまえばもう戻れない、一度芽生えた感情は決して消えはしない――それが恋というものである。

 グリッセンド、彼に惚れた私だが、問題があった。それは、私に婚約者がいたことだ。エールという名の人物なのだが、婚約者がいるため、惚れた相手であるグリッセンドのところへ行くことはできない。私には恋の流れに乗ることが許される道などなかったのだ。

 ――だがその数日後奇跡が起きた。

「お前との婚約だが、破棄とすることにした」

 エールがそんなことを言ってきたのである。

 彼のことは元よりあまり好きではなかった。なぜって、たびたび高圧的な態度を取ってくる人だからである。一緒にいてもあまり楽しくない。

「俺はお前よりずっと愛おしいと思える人と巡り会ったんだ。だからお前との関係はここでおしまいにする。これは決定事項だ。だからお前に何を言われようとも変える気はない」

 もしかしてこれはチャンス!? なんて思いつつ、話を聞く。

「そうですか」
「ん? 何だか嬉しげだな」
「そうでしょうか……」
「まぁいい。分かってもらえるのであればそれが一番ありがたい。話が早いに越したことはないからな」

 こうして私は婚約破棄された。

 しかしそれはある意味幸運であった。
 なんせこれで自由になれるのだ。

「じゃ、永遠にばいばい」
「今までありがとうございました。……さようなら」

 その後私はグリッセンドのところへ行って想いを伝えた。すると意外にも彼も私に興味を持ってくれていたようで。私とグリッセンドの関係はそこから一気に進展、婚約、そして結婚にまであっとう間に進んだ。

 欲していたものは驚きの早さで手に入れることができた。
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