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趣味をやたらと否定してくる婚約者とはやっていけません……。~捨てられてもその先で幸せを掴めました~
小さい頃から親の影響で木材を削って像を作ることが好きだったのだけれど、二十歳になってできた婚約者ルルーブにはその趣味を欠片ほども理解してもらえず、理解してもらうどころか気持ちが悪いだの不気味だの毎日のように言われる始末であった。
だがそれでも私は趣味を捨てる気はなかった。
なぜって、私にはそれしかないから。
私の人生において最も楽しく幸せな瞬間は像を作っている瞬間だ。
手の動きに。
削る音に。
像作りのすべてに私の心は癒される。
もしそれが失われてしまったら――考えるだけでも恐ろしい。
だから彼からの批判を聞こえないふりをしていたのだ。
それでもなんだかんだやっていけるだろうと思っていたし、それがなければ私が私として存在していることができないから。
だが、そんなある日、ルルーブから宣言されてしまう。
「お前との婚約は破棄する!」
彼は私が思っていたよりも激しく像作りを嫌っていた。
「やめろと言ってもいつまで経ってもやめないだろう、お前は。像作りを。木材を削って物を作るなど魔女の行いだ」
「ただの趣味です」
「魔女悪女怪物の行いだッ!!」
「一旦落ち着いてくださいルルーブさん」
「落ち着けるわけがないだろう! 婚約者が魔女のような悪しき行いをしているのだぞ!? 馬鹿なことを言うな!」
なぜそこまで言われなくてはならないのか……。
馬鹿はどっち? と言ってやりたくなる。
「とにかく、婚約は破棄だ。いいな。もう伝えた、そういうことだからな」
彼は最後そう吐き捨てて、去っていった。
人の趣味が好みでないというだけでここまでのことができるなんて……。
どうすればそんな幅のない人間になれるのだろう。
正直答えは見つからないし、そもそもそういう精神構造を理解することができない。
◆
ルルーブに婚約破棄された日からちょうど三年。
私は今日王子と結婚する。
彼は私が作る像を大層気に入ってくれて、そこから交流が始まって――そうしてやがて結婚するに至った。
ルルーブは私の像作りを悪く言っていたけれど、夫となる彼はそんな風には言わなかった。
むしろ、才能がある、と褒めてくれたくらいだ。
誰かに否定されても自分の好きを折る必要はないのだと気づかされた出来事だった。
この学びを活かして、私はこれからも自分の好きを伸ばしてゆける生き方をしていこうと思う。
分かってくれない人もいるかもしれない。
でもそれはそれで仕方がないから気にしなくていい。
理解してくれる人はきっといる。
分かってくれる人はきっといる。
そういう人にこそ褒められるような生き方をしていきたいと思う。
ちなみにルルーブはというと、あの後別の女性と結婚したそうだ。しかし奥さんとなったその女性はかなりのモラハラ気質だったらしく、それによってルルーブは精神を病んでしまったらしい。で、今は自宅で療養しているそう。家と病院を行き来するだけの毎日だと聞いている。
ルルーブに明るい未来はない。
だがそれは彼が進んできた道ゆえだろう――つまりは天罰。
◆終わり◆
だがそれでも私は趣味を捨てる気はなかった。
なぜって、私にはそれしかないから。
私の人生において最も楽しく幸せな瞬間は像を作っている瞬間だ。
手の動きに。
削る音に。
像作りのすべてに私の心は癒される。
もしそれが失われてしまったら――考えるだけでも恐ろしい。
だから彼からの批判を聞こえないふりをしていたのだ。
それでもなんだかんだやっていけるだろうと思っていたし、それがなければ私が私として存在していることができないから。
だが、そんなある日、ルルーブから宣言されてしまう。
「お前との婚約は破棄する!」
彼は私が思っていたよりも激しく像作りを嫌っていた。
「やめろと言ってもいつまで経ってもやめないだろう、お前は。像作りを。木材を削って物を作るなど魔女の行いだ」
「ただの趣味です」
「魔女悪女怪物の行いだッ!!」
「一旦落ち着いてくださいルルーブさん」
「落ち着けるわけがないだろう! 婚約者が魔女のような悪しき行いをしているのだぞ!? 馬鹿なことを言うな!」
なぜそこまで言われなくてはならないのか……。
馬鹿はどっち? と言ってやりたくなる。
「とにかく、婚約は破棄だ。いいな。もう伝えた、そういうことだからな」
彼は最後そう吐き捨てて、去っていった。
人の趣味が好みでないというだけでここまでのことができるなんて……。
どうすればそんな幅のない人間になれるのだろう。
正直答えは見つからないし、そもそもそういう精神構造を理解することができない。
◆
ルルーブに婚約破棄された日からちょうど三年。
私は今日王子と結婚する。
彼は私が作る像を大層気に入ってくれて、そこから交流が始まって――そうしてやがて結婚するに至った。
ルルーブは私の像作りを悪く言っていたけれど、夫となる彼はそんな風には言わなかった。
むしろ、才能がある、と褒めてくれたくらいだ。
誰かに否定されても自分の好きを折る必要はないのだと気づかされた出来事だった。
この学びを活かして、私はこれからも自分の好きを伸ばしてゆける生き方をしていこうと思う。
分かってくれない人もいるかもしれない。
でもそれはそれで仕方がないから気にしなくていい。
理解してくれる人はきっといる。
分かってくれる人はきっといる。
そういう人にこそ褒められるような生き方をしていきたいと思う。
ちなみにルルーブはというと、あの後別の女性と結婚したそうだ。しかし奥さんとなったその女性はかなりのモラハラ気質だったらしく、それによってルルーブは精神を病んでしまったらしい。で、今は自宅で療養しているそう。家と病院を行き来するだけの毎日だと聞いている。
ルルーブに明るい未来はない。
だがそれは彼が進んできた道ゆえだろう――つまりは天罰。
◆終わり◆
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