婚約破棄され泣きながら帰宅している途中で落命してしまったのですが、待ち受けていた運命は思いもよらぬもので……?

四季

文字の大きさ
1 / 28

1話「婚約破棄され、女神と話し」

しおりを挟む
「お前との婚約は破棄とする!」
「え……なぜ、ですか」
「なぜ? 馬鹿なことを言うな。お前は俺を裏切っていただろう。俺以外の男と歩いているところを見たぞ」

 その日私はすべてを失った。
 婚約相手であった彼の呆れるような勘違いによって。

「昨日ですよね。一緒にいたのは兄です! ですので、貴方が言っているようなことは一切していません」
「兄だと? 嘘をつくな! 馬鹿みたいな嘘つくな!」
「嘘ではありません。命だって賭けられます。誓って嘘など口にはしていません、理解してください」

 私は婚約していながら別の異性に手を出すような人間ではない。
 分かってほしいのに分かってもらえない。
 一緒にいたのが兄だということは証明できるのに証明するほんの少しの間すら与えてもらえない。

「お前はみっともない下品な女だ!」
「違います!」
「はは。何を言っても無駄だ、寒いだけ。言い訳なんて、自分の馬鹿さを強調するだけの行動でしかない」

 こうして婚約破棄されて。
 泣きながら家へ帰ろうとしていたところ、通りすがりの謎のおじさんに刃物で刺され、死亡した。


 ◆


『あなたは死にました』

 次に気がついた時、目の前にいたのは女神だった。

「し、死ん……?」
『はいそうです』

 女神の瞳は虹色だ。
 珍しい宝石のような独特の色をしていてとても美しい。

「ええっ……あ、でも、そうでした。思い出してきました。私は確か、誤解で婚約破棄されたうえ、通りすがりの人に刺されて……」
『記憶が戻ったようですね』
「そうでした。はい。確かに思い出しました」
『では大切なことをお伝えしましょう。あなたの今後に関わる、他のどんな物事よりも大切なことを』

 やたらともったいぶってくるなぁ、と思っていたら。

『あなたは亡くなるたびに強くなります』
「は、はぁ」
『その力で、いずれ、世界を救ってください』
「ええ!?」
『それはあなたにしかできないことなのです。分かっていただけましたか? お願いしますね』

 さすがに意味不明過ぎたので「ちょ、ちょっと待ってください!」と発したのだけれど女神は待ってくれなかった。

『ではよろしくお願いしますね』

 女神が消えて、やがて、私自身の意識も薄れてゆく。

 ああ……。
 これから私はどうなってゆくのだろう……。

 分からないことばかりだけれど、でもきっと、流れのままに生きてゆくしか方法はないのだろう。

 ならば今は大人しくしていよう。

 いつかはもう少し形が見えてくるだろうから。
 まだ何もしないでおいて。
 この先のことを考えるのは後にしよう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?

四季
恋愛
もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?

この国において非常に珍しいとされている銀髪を持って生まれた私はあまり大切にされず育ってきたのですが……?

四季
恋愛
この国において非常に珍しいとされている銀髪を持って生まれた私、これまであまり大切にされず育ってきたのですが……?

いきなり悪行なんて言われましても……心当たりがないのですが!? ~嘘つきには天罰がくだるでしょう~

四季
恋愛
いきなり悪行なんて言われましても……心当たりがないのですが!?

婚約者を奪えて良かったですね! 今どんなお気持ちですか?

四季
恋愛
「お姉様、申し訳ありませんけれど、ダルビン様はいただきますわ」 ある日突然腹違いの妹からそんなことを告げられた。 気付いた時には既に婚約者を奪われていて……。

婚約破棄されたので実家へ帰って編み物をしていたのですが……まさかの事件が起こりまして!? ~人生は大きく変わりました~

四季
恋愛
私ニーナは、婚約破棄されたので実家へ帰って編み物をしていたのですが……ある日のこと、まさかの事件が起こりまして!?

ある朝、結婚式用に仕立ててもらったドレスが裂かれていました。~婚約破棄され家出したために命拾いしました~

四季
恋愛
ある朝、結婚式用に仕立ててもらったドレスが裂かれていました。

婚約者がなぜか妹の主張を信じ込んでしまっていましたが、どうやらそこにはあるものが関係していたようで……?

四季
恋愛
婚約者がなぜか妹の主張を信じ込んでしまっていましたが……?

婚約者は自分が裏で皆から馬鹿にされていることに気づいていません。~ただまぁそれでも構わないと思っていたのですが……?~

四季
恋愛
婚約者は自分が裏で皆から馬鹿にされていることに気づいていません。

処理中です...