婚約破棄され泣きながら帰宅している途中で落命してしまったのですが、待ち受けていた運命は思いもよらぬもので……?

四季

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6話「少しずつ強くなっている感覚」

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 親友は号泣するほどに私を大事に思ってくれていた。

 その事実を知ることができただけで、私は幸せだった。

 アマリリスはこの世を去ってしまった。ゆえにミミにはもう二度と会えないだろう。けれども私たちの絆は確かなものであった。それは絶対的なことだし、この先も変わらないはずだ。私は死の先でそのことを理解した。ミミの叫びに、ミミの涙に、その絶対的な形を見たのである。


 ◆


『あなたは亡くなるたびに強くなります』

 命の狭間で、かつてかけられた言葉を思い出す。

 あの時は意味が分からなかった。
 けれど今は少し察せるような気がする。

 生まれ変わるたびに私は強くなっている――。

『その力で、いずれ、世界を救ってください』

 ただそこだけは分からないまま。

 あれはどういう意味だったのか。
 そこまで理解は追いついていないのだ。

 だがいずれは紐解けてくるのだろう……なんとなく、だが、そんな気がする。


 ◆


 剣士の両親のもとに生まれた私ラシエラ・ミレッディアンは両親の影響もあって幼い頃から剣術に打ち込んできた。

 時には「何あれ? 女なのに剣術とかあり得ない」「女の子らしくなくて変よね」などと言われてしまうこともあった。人と違うことをしていたこともあり、道はそれなりに険しかった。悪口を言われたり。嫌みを吐かれたり。そういうことも少なくなくて。どんな時も優しい世界に浸っていたわけではない。

 けれども私は気にせず剣を握り続けた。

「ラシエラ、強くなってきたな」
「ありがとう父さん。でもまだまだ。父さんみたいになりたいんだもん、もっと頑張らなくっちゃ」
「無理しすぎは良くない」
「もっともっと強くなりたい! だから止まっていられない! もう一本、お願いします! 父さん!」

 晴れの日も、雨の日も、父と剣を交える。

「今日はわたしが相手するわぁ」
「母さん! お願いします!」
「うふふ。ラシエラは相変わらず真っ直ぐねぇ」

 暑い日も、寒い日も、母とも剣を手にして向かい合う。

 訓練は厳しい。父も母も戦闘訓練においてはあまり手加減してくれないから。もっとも、それでも一応手加減してくれてはいるのだろうけれど。ただ、私を勝たせるための加減というのは一切ない。それゆえ無駄な動きをすればすぐに負けてしまう。

 それでも私は剣を握ることが好きだった。

 動いている時、向き合っている時、無限に心躍る。

 ――私は剣を振ることが好き!


 そんなラシエラだったが二十歳になると婚約者ができた。
 婚約者ヴェヴェンはそこそこ良い家の子息。
 しかしながら怠惰なところのある人でありストイック寄りのラシエラとは性格が合わなかった。

 ヴェヴェンはよく友人らに「婚約したラシエラなんだけどさ、剣とか好きでキツすぎる」「あんなやつと婚約したくなかった」などと愚痴をこぼしていたそうである。

 だがそんな関係が改善するはずもなく。

 やがてその時はやって来てしまう。

「ラシエラ、悪いけど、俺はもうお前とは一緒には生きないから」
「……急ですね」
「婚約は破棄する」
「本気ですか?」
「もちろん! 本気! 決定は決定! お前みたいな野蛮な女と生涯を共にする気は一切ない」

 そんなことを言われ、あっさりと切り捨てられてしまったのだった。

「お前みたいな野蛮な女、誰だって大嫌いに決まってる。嫌がるのは俺だけじゃない。男ならお前みたいな女の相手なんてしない。俺はまだ優しいほうだ、ここまで付き合ってきたんだから」

 彼は最後まで心なかった。


 婚約破棄された日から四日が経った夜。
 理由は不明だが魔物の襲撃があった。
 治安維持組織の者たちが頑張って何とか撃退したのだが、被害がまったくなかったというわけではなくて、負傷者は複数出てしまった。

 その中にはヴェヴェンの妹も入っていて。

 可愛がっていた妹が傷つけられた。
 その事実に向き合いきれなかったヴェヴェンは精神が崩壊した。

 ヴェヴェンは朝から晩まで魔物に襲われる妄想に憑りつかれ叫び続けているらしい。
 そのような状態ではどうしようもないので、一応、落ち着かせるための薬を投与してみてはいるそうなのだが。ただ、薬の効果はいまいちらしくて。一日に何十回も叫んだり暴れたりするという厄介な状態は継続してしまっているそうだ。

「ねえ聞いた? ヴェヴェンって人、また叫んでるんですって」
「怖いわね~」
「妹さんが魔物に傷つけられたらしくって」
「それでそんな風になってしまったのね~。気の毒だわ~。でも、騒ぐのはやめてほしいわね~。叫ぶなんて近所迷惑の極みよね~」

 ……正常だった頃の彼は、もう、この世には存在しない。


 襲撃事件以降も魔物の襲撃は時々あった。
 そういう時に剣術は役に立つ。
 この手で誰かを救えた時、この手で誰かを護れた時、今日に至るまでの努力は無駄ではなかったのだと強く思うことができた。

 ただひらすらに戦い続けた。

 何かのために。
 誰かのために。

 そして、私自身のために。
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