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前編
しおりを挟む我が名はリフェイラ、森の魔女。
若々しい少女に近いような見た目ではあるが、これでも二百歳はゆうに超えている。
しかし未婚である。
魔女の中にも人間などと結婚している者やしていた者は存在している。
それは罪ではない。
あくまでいつか別れが来るというだけのことで。
悲しみが約束されていることは事実だが、だからといって関わってはならないわけではないし結ばれれば罪となるわけでもない。
ただ、私はなかなか良い人とは出会えずここまで来た。
だから恐らく死ぬまで恋も愛もしることはないだろう――そう思っていた、あの日までは。
◆
その日、魔女の夜会へ向かっている時、森で火をつけようとしている少年を目撃する。
「何してるんだ!? こら! やめろ!!」
泣き出しそうな顔でマッチをすりかけている少年を咄嗟に制止した。
だって、火なんてつけられてしまっては大変だからだ。
そんなことをされてはこの森の愛おしい多くのものが燃えてしまう――木々も、生き物も、思い出も。
それだけは避けたいし、万が一そんなことになったら耐えられない。
だから必死になって止めたのだ。
止めなくてはいけない、その思いが何よりも強かった。
「こら!!」
少年を地面に押し倒す。
「……どうして、止めるの」
彼は第一声そう言った。
目もとは泣き過ぎて腫れていた。
「何だと?」
「止めないでよ」
「馬鹿者! 危ないだろう、火をつけるなど!」
「……もう僕は要らないんだ。だから死ぬだけ。消えるだけ」
「事情は知らないがとにかくそれはやめろ」
「でも……」
「いいからやめろ! 火は駄目だ!」
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