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後編

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 ◆


 あれから色々あって、私は今、生まれ育った国ではなく隣国の王妃となっている。

 生まれた国から離れるのは切なさもあった。故郷を、アイデンティティを、捨ててしまうような気もして。けれども近く王となる予定の王子が熱心に私に声をかけてくれて、その結果彼のところへ行くことになった。

「見て! リリーシア様よ! 麗しい!」
「あっちから来たのよね、でも驚いたわ、とっても可愛い人」
「リリーシア様!」
「こっち向いてくださぁーい!」

 こうして私は隣国で幸せを掴めたのだが……かつて私がいたあの国は今はもう滅び他の国の持ち物となってしまっているようだ。

 権力ある家の息子であるコールウィーは、その家柄ゆえ国の重要人物の一人とみなされ、占領した国によって拘束されて処刑されてしまったそうだ。

 その話を聞いた時は驚いた。
 まさかそんなことになっていたとは、と。

 でも、正直、可哀想とは思わない。

 あの美しい髪が失われてしまったことは悲しくも思うけれど。

 けれどもすべては過ぎ去ったこと。
 もはや私と彼に縁はなく。
 だから彼がどうなろうが知ったこっちゃない。


◆終わり◆
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