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1話
しおりを挟む冒険者として十代後半から活動していた私だったが、二十歳になると母から「そろそろ結婚してちょうだい」と執拗に言われるようになり、母が紹介してくれた男性クモルレッツと婚約することになってしまった。
乗り気ではなかった。
雌として気に入ってもらう自信はなかったから。
どうでもいいあてがわれただけの男に対して雌らしく奴隷のように奉仕するのは向いていないという自覚があった。
けれども親がうるさいから、その道から逃れることはできなかったのだ。
そして、やはり気に入ってもらえなかった。
クモルレッツもそうだが特に彼の母親が私を良く思っていないようで。私の本当にはありもしない話を、クモルレッツに吹き込んだり、近所の人にこっそり話したりしていたようだ。そのせいで私は何人もから馬鹿にされ悪女と言われるようになっていった。野蛮な悪女、なんて、何回言われただろう。クモルレッツの母親のせいでかなり心ない目に遭わされた。
だがやがてそんな辛い日々にも終わりが来る。
「君は悪いけど……冒険者なんかしてた野蛮な女性とはやっていけないと強く思うようになったよ。それに、そんな血を家に入れたくないって母も言ってるしね。だから、婚約は破棄するよ」
クモルレッツがそう言ってきた。
その言葉を聞いた時、私は嬉しかった。
確かに衝撃ではあったけれど。
それを加えて考えたとしても、それでも、嬉しさは間違いなくあった。
こうして私とクモルレッツの関係は終わりを迎える。
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