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前編
しおりを挟む国が認定する上級魔法使いだった私には、フリュリン王子という婚約者がいた。
私と彼の関係は悪いものではなく。
そこそこ良い関係を保てていた、と思っている。
だが、ある時から、フリュリンの私を見る目は変わった――何があったのかは知らないが親の仇を見るような目を向けてくるようになったのだ。
それでも関係を続けていたのだけれど。
「お前とはもう無理だ! よって、本日をもって本日は破棄とする!」
ある快晴の日、フリュリンは食事の間にてそう宣言した。
「お前の実家は我が母の暗殺事件に加担していたそうではないか! 許せるわけがない! ただ、これまではずっと、言わずにいた。お前が先に明かして謝ってきたなら許そうと思っていたのだ……だがお前は黙っていた! 謝りもしない! だからもう無理だと判断したのだ」
心当たりがない……何の話でしょうか?
「お母様の……?」
「ああ! 認めるか? 我が母を殺めることに加担していたのだろう!?」
「すみません、まったく知りません」
「嘘をつくのか!?」
「いえ、嘘はつきません」
「馬鹿め! 嘘だろう! 嘘に決まっている!」
フリュリンは顔を真っ赤にして怒っている。
「嘘ではありません、信じてください!」
「信じられるか!!」
「ええ……」
「チュレシアがそう言っていたんだぞ! 嘘なわけがないだろう!」
「えと、あの、チュレシアとは……?」
「呼び捨てにするな!! 俺の昔からの知り合いの女性だ!! 呼び捨てなど無礼だぞ!!」
「すみません……」
「はっ。馬鹿が。やはり悪女は礼儀も知らないのだな」
いきなりそんなことを言われても。
知らないし、としか言い様がない。
ちょっとしたことに対して、いちいちカッとならないでほしい。
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