60 / 131
59話 「純白の奇跡」
しおりを挟む
私がジェシカを解放する間ヴィッタを食い止めていたノアがこちらへ寄ってくる。
「ジェシカ、平気ー?」
ノアは確認するが、号泣しているジェシカは頷いただけだった。声は出ないみたいだ。
「テメェら! ぜぇーーったいに逃がさねぇ! みんなまとめておもちゃにしてやる!」
激怒している様子のヴィッタは、汚い言葉を荒々しく吐く。子どものような可愛らしい顔を真っ赤にしていた。
ちょうどその時、彼女の背後に二体の大柄な悪魔が現れた。実物の方が映像で見た時より大きい。
「王女様、撤退するよー」
「えぇ」
私たちが方向転換した瞬間、そちら側からも二体の大柄な悪魔が現れた。ヴィッタが連れている二体と同じタイプだ。
「……また!」
取り囲まれた。
肌を刺すような強い魔気に戦慄する。
「おかしいなー。ヴィッタ以外の魔気は感じなかったんだけどー」
ノアが魔気を感じ逃すはずがない。恐らくこの大柄な悪魔たちは今ここへ来たのだろう。
「キャハッ! でもぉ、新しいおもちゃがわざわざ来てくれるなんて。ヴィッタ、ラッキー! キャハハハッ」
大柄な悪魔はクオォォォと奇声を発しながら接近してくる。ノアが珍しく真剣な表情で身構えていた。
ヴィッタは私たちの表情が強張るのを楽しそうに眺めながら、手元の小さなナイフをクルクル回している。さっきまで怒鳴り散らしていたのが嘘のようにご機嫌になっている。ここまで差が激しいとなんとなく怖さを感じた。情緒不安定にも程がある。
「……王女様、気をつけて」
頬を濡らす涙を手で拭いながら、ジェシカが警笛を鳴らす。
「あの悪魔……バカだけど、かなりのパワーだから」
ジェシカにかなりのパワーと言わせるとは余程怪力なのだろう。
多分、私なんかが攻撃されれば一溜まりもない。
刹那、ヴィッタが物凄い勢いで赤い電撃を放ってくる。ノアは咄嗟にそれをシールドで防ぐ。ほぼ同時に四体の悪魔が飛びかかってくる。
「寄って!」
ノアは珍しく鋭く言い放つ。私はその珍しさに危機感を感じ、ジェシカを連れたまま急いで彼に寄る。飛びかかってくる悪魔に、私は思わず目を瞑る。
ぶつかるような大きな音と衝撃が空間に響いた。
目をゆっくり開けると、ドーム状になったノアのシールドが私たち三人を包んでいた。大柄な悪魔たちは諦めずに攻撃を続ける。殴り、引っ掻き、蹴る。
「やるねぇ、キャハッ! さすがの反応速度。でもでも、ヴィッタとその家来には叶わないよ。キャハハハッ!」
甲高い声で笑いながら話す。今はとてもご機嫌なようだ。
「王女様、ジェシカを連れて逃げてくれるー?」
ノアの紫色をした聖気がシールドに入った亀裂を修復しているところだった。
「貴方は?」
「僕は後から逃げるからー」
「そんなのダメよ。一緒じゃなくちゃ嫌!」
もしノアがヴィッタに捕まったら、また同じことの繰り返しになってしまう。そんなわけにはいかない。
「悪魔は私が止めるわ!」
四体の悪魔に意識を向け「止まれ」と強く念じる。
「……と、止まった……?」
大柄な悪魔たちは一瞬静止した。しかし次の瞬間プルプルと小さく震え、そして、四体同時に動き出した。
「あれっ?」
効かなかった。まさかの結果だ。
いや、正しくは「束の間しか効かなかった」かもしれない。
「効いてないみたいだねー」
「こんな時に限って……あ、え?何これ、体が……」
急激なめまいに襲われ、思わずしゃがみこんでしまう。このタイミングでめまいとは、なんという不運か。
「王女様っ!? え、大丈夫?」
ジェシカが声をかけてくれても私はまともに返せない。みるみるうちに汗だくになる。
周囲には大柄な悪魔四体とヴィッタ。それに対し、こちらでまともに動けるのはノアだけ。
「……まずいねー」
ちょうど私が考えていたことをノアが漏らした。
「キャハッ、バァーカ! まともに戦えないやつばっかで来るからだよーっ!」
舌を出し、指で目を下を引っ張る。ヴィッタは勝利を確信して調子に乗っている様子。少し腹立つが、今の私たちには怒っている余裕などはない。
「ヤーン! ヴィッタ、カルチェレイナ様に褒められちゃうっ。キャハッ、褒美は何にしーよーうーかーなぁ? キャハハハッ」
ヴィッタが赤い髪を揺らして妄想に花を咲かせている間に、四体の悪魔が私たちの方へ迫ってくる。
「天使三体もゲットできるなんて、ヴィッタ、ラッキー! みーんなまとめておもちゃにしてあげるっ!」
「そうはさせん」
——光の槍。
純白の輝きを放つ槍が凄まじい速さで飛んできて悪魔の一体を貫いた。
「な、何事よっ!?」
一番に声をあげたのはヴィッタ。表情を見る感じかなり動揺している。
けれど私も正直驚いた。
だって、そこにエリアスが立っていたんだもの。
「「エリアス!?」」
私とジェシカが叫んだのはほぼ同時だった。
「隊長だー」
だいぶ遅れてノアも言った。
……こんな時まで遅いのね。まぁいいや。
「おい! テメェ誰だ! 天使の仲間か!?」
ヴィッタは品のない方の口調で怒鳴り声だった。
「私はエリアス。王女の護衛隊長だ」
ほぼ白に近い金髪、長い睫に瑠璃色の瞳。一切迷いのない長槍の鋭い構え。
「王女の邪魔をする者は、誰であろうと排除する。護衛隊長の名において」
「ジェシカ、平気ー?」
ノアは確認するが、号泣しているジェシカは頷いただけだった。声は出ないみたいだ。
「テメェら! ぜぇーーったいに逃がさねぇ! みんなまとめておもちゃにしてやる!」
激怒している様子のヴィッタは、汚い言葉を荒々しく吐く。子どものような可愛らしい顔を真っ赤にしていた。
ちょうどその時、彼女の背後に二体の大柄な悪魔が現れた。実物の方が映像で見た時より大きい。
「王女様、撤退するよー」
「えぇ」
私たちが方向転換した瞬間、そちら側からも二体の大柄な悪魔が現れた。ヴィッタが連れている二体と同じタイプだ。
「……また!」
取り囲まれた。
肌を刺すような強い魔気に戦慄する。
「おかしいなー。ヴィッタ以外の魔気は感じなかったんだけどー」
ノアが魔気を感じ逃すはずがない。恐らくこの大柄な悪魔たちは今ここへ来たのだろう。
「キャハッ! でもぉ、新しいおもちゃがわざわざ来てくれるなんて。ヴィッタ、ラッキー! キャハハハッ」
大柄な悪魔はクオォォォと奇声を発しながら接近してくる。ノアが珍しく真剣な表情で身構えていた。
ヴィッタは私たちの表情が強張るのを楽しそうに眺めながら、手元の小さなナイフをクルクル回している。さっきまで怒鳴り散らしていたのが嘘のようにご機嫌になっている。ここまで差が激しいとなんとなく怖さを感じた。情緒不安定にも程がある。
「……王女様、気をつけて」
頬を濡らす涙を手で拭いながら、ジェシカが警笛を鳴らす。
「あの悪魔……バカだけど、かなりのパワーだから」
ジェシカにかなりのパワーと言わせるとは余程怪力なのだろう。
多分、私なんかが攻撃されれば一溜まりもない。
刹那、ヴィッタが物凄い勢いで赤い電撃を放ってくる。ノアは咄嗟にそれをシールドで防ぐ。ほぼ同時に四体の悪魔が飛びかかってくる。
「寄って!」
ノアは珍しく鋭く言い放つ。私はその珍しさに危機感を感じ、ジェシカを連れたまま急いで彼に寄る。飛びかかってくる悪魔に、私は思わず目を瞑る。
ぶつかるような大きな音と衝撃が空間に響いた。
目をゆっくり開けると、ドーム状になったノアのシールドが私たち三人を包んでいた。大柄な悪魔たちは諦めずに攻撃を続ける。殴り、引っ掻き、蹴る。
「やるねぇ、キャハッ! さすがの反応速度。でもでも、ヴィッタとその家来には叶わないよ。キャハハハッ!」
甲高い声で笑いながら話す。今はとてもご機嫌なようだ。
「王女様、ジェシカを連れて逃げてくれるー?」
ノアの紫色をした聖気がシールドに入った亀裂を修復しているところだった。
「貴方は?」
「僕は後から逃げるからー」
「そんなのダメよ。一緒じゃなくちゃ嫌!」
もしノアがヴィッタに捕まったら、また同じことの繰り返しになってしまう。そんなわけにはいかない。
「悪魔は私が止めるわ!」
四体の悪魔に意識を向け「止まれ」と強く念じる。
「……と、止まった……?」
大柄な悪魔たちは一瞬静止した。しかし次の瞬間プルプルと小さく震え、そして、四体同時に動き出した。
「あれっ?」
効かなかった。まさかの結果だ。
いや、正しくは「束の間しか効かなかった」かもしれない。
「効いてないみたいだねー」
「こんな時に限って……あ、え?何これ、体が……」
急激なめまいに襲われ、思わずしゃがみこんでしまう。このタイミングでめまいとは、なんという不運か。
「王女様っ!? え、大丈夫?」
ジェシカが声をかけてくれても私はまともに返せない。みるみるうちに汗だくになる。
周囲には大柄な悪魔四体とヴィッタ。それに対し、こちらでまともに動けるのはノアだけ。
「……まずいねー」
ちょうど私が考えていたことをノアが漏らした。
「キャハッ、バァーカ! まともに戦えないやつばっかで来るからだよーっ!」
舌を出し、指で目を下を引っ張る。ヴィッタは勝利を確信して調子に乗っている様子。少し腹立つが、今の私たちには怒っている余裕などはない。
「ヤーン! ヴィッタ、カルチェレイナ様に褒められちゃうっ。キャハッ、褒美は何にしーよーうーかーなぁ? キャハハハッ」
ヴィッタが赤い髪を揺らして妄想に花を咲かせている間に、四体の悪魔が私たちの方へ迫ってくる。
「天使三体もゲットできるなんて、ヴィッタ、ラッキー! みーんなまとめておもちゃにしてあげるっ!」
「そうはさせん」
——光の槍。
純白の輝きを放つ槍が凄まじい速さで飛んできて悪魔の一体を貫いた。
「な、何事よっ!?」
一番に声をあげたのはヴィッタ。表情を見る感じかなり動揺している。
けれど私も正直驚いた。
だって、そこにエリアスが立っていたんだもの。
「「エリアス!?」」
私とジェシカが叫んだのはほぼ同時だった。
「隊長だー」
だいぶ遅れてノアも言った。
……こんな時まで遅いのね。まぁいいや。
「おい! テメェ誰だ! 天使の仲間か!?」
ヴィッタは品のない方の口調で怒鳴り声だった。
「私はエリアス。王女の護衛隊長だ」
ほぼ白に近い金髪、長い睫に瑠璃色の瞳。一切迷いのない長槍の鋭い構え。
「王女の邪魔をする者は、誰であろうと排除する。護衛隊長の名において」
0
あなたにおすすめの小説
転生して捨てられたけど日々是好日だね。【二章・完】
ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
おなじみ異世界に転生した主人公の物語。
転生はデフォです。
でもなぜか神様に見込まれて魔法とか魔力とか失ってしまったリウ君の物語。
リウ君は幼児ですが魔力がないので馬鹿にされます。でも周りの大人たちにもいい人はいて、愛されて成長していきます。
しかしリウ君の暮らす村の近くには『タタリ』という恐ろしいものを封じた祠があたのです。
この話は第一部ということでそこまでは完結しています。
第一部ではリウ君は自力で成長し、戦う力を得ます。
そして…
リウ君のかっこいい活躍を見てください。
退屈令嬢のフィクサーな日々
ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。
直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
【完結】元Sランク受付嬢の、路地裏ひとり酒とまかない飯
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ギルド受付嬢の佐倉レナ、外見はちょっと美人。仕事ぶりは真面目でテキパキ。そんなどこにでもいる女性。
でも実はその正体、数年前まで“災厄クラス”とまで噂された元Sランク冒険者。
今は戦わない。名乗らない。ひっそり事務仕事に徹してる。
なぜって、もう十分なんです。命がけで世界を救った報酬は、“おひとりさま晩酌”の幸福。
今日も定時で仕事を終え、路地裏の飯処〈モンス飯亭〉へ直行。
絶品まかないメシとよく冷えた一杯で、心と体をリセットする時間。
それが、いまのレナの“最強スタイル”。
誰にも気を使わない、誰も邪魔しない。
そんなおひとりさまグルメライフ、ここに開幕。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる