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前編
しおりを挟む私とヴォルヴェは異性ながら昔からの幼馴染みで、それで、ずっと一緒にいたいからと婚約までした仲だった。
しかし、ある時、その婚約は破棄となってしまう。
というのも、ヴォルヴェの両親が「息子はもっと条件の良い裕福な女性とくっつけたい」などと言い出したのだ。
ヴォルヴェはかなり抵抗してくれたようだった。彼なりに、できる抵抗はすべてしたのだそう。しかしその抵抗も役には立たず、ヴォルヴェの両親の意思によって私と彼の婚約は破棄となってしまった。
「うちの息子はもっとハイレベルな女性と結婚させますから!」
「すまないね、幼馴染み程度の女性を嫁に貰うというのはどうしても無理なのだよ」
彼の両親は最後私に対してそんなことを言って去っていった。
私はヴォルヴェのことが好きだった。
ヴォルヴェも私のことを大事に想ってくれていた。
――けれどもその気持ちが実ることはなかったのだった。
◆
しかし、それから二年ほどが経って、ある朝急に彼が私の家にやって来た。
「ヴォルヴェ!?」
「ごめん急に。もう顔も見たくないと思うけど……今ちょっといい?」
「ええ、いいわよ」
「ありがとう。じゃあ、ここで」
思わぬ再会だった。
そして、彼から、裕福な女性アドマリーンとどうなったかを聞いた。
「……そんな。じゃあ、家が裕福だっていう話は嘘だったの?」
「そうなんだ」
「騙されていたのね」
「昔は本当に裕福だったみたいで。でも今はそうじゃなくなっていたみたいなんだ。親の事業が失敗したとか何とかで。でも、本当のことを言ったら娘に縁談が来なくなってしまう」
ヴォルヴェとアドマリーンの婚約は既に破棄となったのだそう。
「だから、隠していたのね」
「そうみたいなんだ」
暫し、沈黙があって。
「それに彼女、人格にも問題があってさ」
「どういう問題?」
「うちで時折暮らすようになっていたんだけど……凄く高圧的で偉そうなんだ。皆こき使われそうになってて」
「ええっ……」
「そういうのもあって、親が怒り出して婚約破棄になったってことなんだ」
「そっか……」
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