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前編

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 あなたの瞳は金平糖みたいに煌めく。
 それぞれの眼球の色が異なるオッドアイ、右は緑で左は青。

 とても綺麗だ――子どもの頃から強くそう思っていた。

 あなたはまるで人でないかのよう。それは嫌みでも悪口でもなく、良い方向への素直な感想。傷一つない滑らかな肌も、流れ星の軌跡を示しているかのような長い金髪も、そして双眸も。何もかもがあなたを人の域を越えた芸術品のように仕立て上げている。それこそ、人に夜空を映し出したかのようで。遠くから見ればあの広大な夜空のようで、近くで見れば星屑がこぼれ落ちたかのよう、その姿というのはとてつもなく魅力的だ。

 ああ、とても美しい……。

 見つめていたらついそんな言葉がこぼれそうになってしまうほどの魅力があなたにはあった。

「私ね、婚約破棄されたの」

 そんなあなたは、今、目の前でとても悲しそうにしている。

「え……そ、そうだったの、でもどうして……」
「オッドアイが不気味なんですって」

 目の前のあなたはとんでもなく悲しそう。

 そっと抱き締めてあげたい。
 その柔らかに触れて。
 すべてを忘れさせるほどにその身を溶かしてしまいたい。

 ――でも、無理か。

 わたしは女だ。

 きっとあなたはわたしを選ばない。だって女同士なんだもの。あなたはわたしを信頼してくれていて、辛いことまでこうして打ち明けてくれるほどだけれど、だからといってさらに一歩進むことなんてできるはずもない。純粋な心でわたしを共として見てくれているあなたを一方的な感情で振り回すような卑怯な真似はしたくないので、わたしは今日もあなたへの感情をそっと呑み込むのだ。

 たとえ、辛くても。
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