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前編
しおりを挟む「好きです! 結婚してください!」
花束を持って告げられた、刹那、私は突然気を失った。
「え……あ、ちょ……しっかり……大丈夫ですか!? だいじょ――」
想いを告げてくれた彼の声が遠ざかってゆく。
視界にはもやがかかって。
世界から魂が剥がれてゆくような感覚がある。
よりによって、何で今――!?
……不運過ぎる。
◆
――次に気がついた時、私は知らない世界にいた。
(私……倒れて……あれ、ここはどこ……?)
胸の前まで垂れた髪を見て気づく。
私が私でなくなっていることを。
(……別人になってる!?)
これからどうしよう、と思っていると。
「お嬢様! こんなところにいらっしゃったのですね!?」
一人の男が茂みから飛び出してきた。
なかなか凛々しい男性だ。
「え……?」
「お嬢様は行方不明になっていらっしゃったのですよ!?」
私と彼は知り合いではない。
でもこの身体の女性と彼は知り合いなのだろう――多分。
「ええっ」
「お元気そうで何よりです」
「は、はい……」
「立てますか? さ、こちらへ」
「えと、あの、ここは一体……どこですか?」
「え」
彼の表情が固まる。
「お嬢様……?」
「あ、あの、私、記憶が」
咄嗟にそんなことを言ってしまう。
「記憶?」
「無いんです……記憶が」
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人格そのものが違っているから。
ただ、それでも。
彼女であった頃の記憶がないことは事実だ。
まぁ、ほぼ、記憶喪失みたいなものだろう。
「信じられません、そのようなことが……では名乗りましょう、私はエルフィンと申します」
「は、はい……エルフィンさん、ですね」
「はい。何とでも呼んでください」
「ええと、では……エルフィンさん、で?」
彼は一瞬寂しそうな顔をしたけれど。
「構いませんよ」
そう発してからは笑みを浮かべた。
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