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前編

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 地毛は赤茶ながら薬品を使って金髪のように変色させた長い髪は腰のあたりにまで届くほどの丈。頬には暗い色でくっきりと濃いシャドーを入れ、頬が痩けているように見せる。元々厚みがしっかりある唇には緑の口紅を塗り、油を塗り重ねて過剰な艶を出している。

 そんな彼が言う。

「お前との婚約だが、破棄とさせてもらうことにした」

 唐突な発言。
 戸惑いはある。

「急ですね。……なぜですか?」
「なぜ? 簡単なことだよ。美しい俺にお前は似合わない」

 まぁ確かに……彼のセンスにはついていけない。
 彼は、ヘアメイクもそうだが、ファッションセンスがかなり独特だから。

 今日だって凄い。

 ピンクのハート柄のシャツを胸もとを大きく開けて着ていて、グリーン系チェックのスカーフと黄緑系の毛糸で編んだような幅広マフラーを同時に首もとに巻き付けている。また、シャツの一部は星形にくりぬかれていて、そこからは汚れたへそと毛だらけの肌がちらりと露出している。

 股のところだけがブリーフに見えるようなデザインのジーンズを穿き、その上に被せるように虹色の長めハイソックスを着用。そして、右足には女性が履くような硝子製のパンプス、左足には青のローファーを、それぞれ履いている。さらに、右足の足首には二頭身くらいのよく分からないキャラクターの飾りと複数の昆虫ブローチがついている。
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