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前編
しおりを挟む穏やかな風に金の髪を揺らしながら、河原を歩く。
いつもなら快適な気候。
でも今は少しそうは思えない。
――今日、婚約破棄された。
婚約相手であった彼ルカブスは私を選ばなかった。
いや、そうではない。
一度は選んだ私を心なく切り捨てたのだ。
「あ」
河原に落ちていた銀の鱗、ふと目についてそれに触れる――その瞬間世界が白色の光に包まれて。
『これに気づくとは、やりますね』
「え……」
光が去った次の瞬間、目の前には大きな龍がいた。
『可哀想な貴女に、幸福を差し上げましょう』
目の前に龍がいるというだけでも驚きなのに、その龍から放たれた言葉はさらなる驚きを誘った。
「え?」
きょとんとすることしかできない。
『貴女は日頃の行いが良かったのでしょう、これに気づけたということは。なので、これから貴女には、良いことがたくさん起こります』
「そう……でしょうか」
『婚約破棄されたのでしょう?』
「あ、はい」
『ですがご安心を、それは幸福の始まりです』
「そう……なんですか」
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