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後編

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「えっと……あの、爺さん、はさすがに言い過ぎではないですか?」

 ついそんなことを言ってしまった。

「何だと?」

 眉間にしわを寄せられる。

「失礼でしたらすみません。ですが、私から見ると、貴方はまだお爺さんという感じではない気がするのです。まだまだお若いですよ」
「嘘はいい」
「嘘ではありません! 本当のこと、思っていることです」

 その後彼は「もういい」と言ってどこかへ行ってしまった。

 やらかした……。
 これではまた婚約破棄されてしまうかも……。

 そんなことを思っていたのだが、後日、礼状と贈り物が届いて。

『先日はありがとう』

 開いた礼状にはそんなことが書かれていて、ほっこりする。

 良かった。
 怒られてはいないようだ。

 その後私は彼と結婚し、想像以上に幸せな暮らしを手に入れることに成功した。

 彼は意外と愛情深い人だった。
 離れていてもそっと見守ってくれる、まるで保護者のような人。

 あの時言っていた「愛など要らぬ」は一体何だったのだろうか……いやはや、どこまでも謎である。

 照れ隠しだったの……かな?

 ちなみに。
 婚約者だった彼と親友であった彼女――私を裏切った二人――その人たちは、結婚はしたものの、幸せにはなれなかったようだ。
 というのも事件があったようなのだ。
 結婚後すぐに生まれた可愛らしい第一子を夫がうっかりミスで死なせてしまったそうで、それによって二人は憎しみ合う二人になってしまったそうなのである。

 後に離婚したようだが。

 二人とも精神的にかなりやられており、結婚前夜には夫婦で殺し合いになるかもしれないほど危険な状態だったようだ。


◆終わり◆
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