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後編
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「そういうことね。分かったわ、受け入れましょう」
「本当かい……!」
「えぇ。けれど勘違いしないで、許すわけではないわ。支払うべきものは支払ってもらうわよ」
「威張るな! 勘違いしているのはそっちだ! 自分勝手女!」
またしても怒鳴りだす。
もはや腹も立たない。呆れるばかり。やれやれ、という感じ。急に怒鳴られるのにももう慣れたから、怖くはないし、苛立ちもしない。ただ、ただ、呆れる。
「お前がそんなだから別の女にいかざるを得なかったんだ! 悪いのはこっちではない! お前の振る舞いに問題があったんだ!」
残念さも多少はあるけれど、結果的にはこれで良かったのかもしれない。こんな風にすぐ怒り出す人と生きていくなんて、苦難の連続でしかない。そんなことになるくらいなら、婚約者のうちに別れてしまう方が良い。その方が、一生苦しまなくて済むから。
◆
婚約破棄に向け、手続きが進む。
アルペンが勝手に別の女と大人の関係を持ったということもあって、こちらに非は一切なかった。婚約破棄に至った理由は彼の行動がすべて。厳密には、彼とカーネリアの問題。ということで、私に損はなかった。そして、アルペンには、慰謝料の支払いが命ぜられた。正当な判断であったと思う。
不満を抱きつつも、アルペンは慰謝料を支払った。
これですべては終わる。
私たちの関係は終わり。
ただ、彼らのその後についても、少しばかり耳にする機会があった。
アルペンは娘を妊娠させたということでカーネリアの両親から厳しい言葉をかけられたらしい。ただ、アルペンが責任を取ると言ってカーネリアと結婚したため、カーネリアの親の怒りは一旦治ったそうだ。
けれども、幸せだけが待っているわけではなかった。
結婚した二人は幸せに暮らし始める。やがてカーネリアは子を産んだ。しかし、その頃から、アルペンはよく外出するようになる。子育てで忙しいカーネリアが大人な意味で構ってくれなくなったからだとか。
そして、ある時、カーネリアが彼の外出に口を挟む。
そこから大喧嘩に発展してしまった。
アルペンは怒った勢いで家出をする。もちろん本気の家出ではない。そのうち帰る、という程度の、衝動的な家出だ。
しかし、家に戻った時、カーネリアと子は亡くなっていた。
血の海となった自宅に放置された二つの塊。
アルペンはそれを見て発狂。知能が幼児のようになり、基本的な生活さえできなくなってしまう。少しして、親が手続きをし、アルペンは精神を病んだ者が多く入る施設へ入ることとなった。以降、アルペンが施設から出ることは二度となかったそうだ。
私はもう婚約はしなかった。
けれども、孤児の世話をする仕事を始め、たくさんの子どもたちと触れ合いつつ生きた。
◆終わり◆
「本当かい……!」
「えぇ。けれど勘違いしないで、許すわけではないわ。支払うべきものは支払ってもらうわよ」
「威張るな! 勘違いしているのはそっちだ! 自分勝手女!」
またしても怒鳴りだす。
もはや腹も立たない。呆れるばかり。やれやれ、という感じ。急に怒鳴られるのにももう慣れたから、怖くはないし、苛立ちもしない。ただ、ただ、呆れる。
「お前がそんなだから別の女にいかざるを得なかったんだ! 悪いのはこっちではない! お前の振る舞いに問題があったんだ!」
残念さも多少はあるけれど、結果的にはこれで良かったのかもしれない。こんな風にすぐ怒り出す人と生きていくなんて、苦難の連続でしかない。そんなことになるくらいなら、婚約者のうちに別れてしまう方が良い。その方が、一生苦しまなくて済むから。
◆
婚約破棄に向け、手続きが進む。
アルペンが勝手に別の女と大人の関係を持ったということもあって、こちらに非は一切なかった。婚約破棄に至った理由は彼の行動がすべて。厳密には、彼とカーネリアの問題。ということで、私に損はなかった。そして、アルペンには、慰謝料の支払いが命ぜられた。正当な判断であったと思う。
不満を抱きつつも、アルペンは慰謝料を支払った。
これですべては終わる。
私たちの関係は終わり。
ただ、彼らのその後についても、少しばかり耳にする機会があった。
アルペンは娘を妊娠させたということでカーネリアの両親から厳しい言葉をかけられたらしい。ただ、アルペンが責任を取ると言ってカーネリアと結婚したため、カーネリアの親の怒りは一旦治ったそうだ。
けれども、幸せだけが待っているわけではなかった。
結婚した二人は幸せに暮らし始める。やがてカーネリアは子を産んだ。しかし、その頃から、アルペンはよく外出するようになる。子育てで忙しいカーネリアが大人な意味で構ってくれなくなったからだとか。
そして、ある時、カーネリアが彼の外出に口を挟む。
そこから大喧嘩に発展してしまった。
アルペンは怒った勢いで家出をする。もちろん本気の家出ではない。そのうち帰る、という程度の、衝動的な家出だ。
しかし、家に戻った時、カーネリアと子は亡くなっていた。
血の海となった自宅に放置された二つの塊。
アルペンはそれを見て発狂。知能が幼児のようになり、基本的な生活さえできなくなってしまう。少しして、親が手続きをし、アルペンは精神を病んだ者が多く入る施設へ入ることとなった。以降、アルペンが施設から出ることは二度となかったそうだ。
私はもう婚約はしなかった。
けれども、孤児の世話をする仕事を始め、たくさんの子どもたちと触れ合いつつ生きた。
◆終わり◆
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