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魔女ですが研究者のようなものです。しかし彼はそれが理解できないようで、婚約破棄してきました。

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 私は魔女。
 けれども世の悪い女のイメージの魔女とは違う。
 魔法を研究する者だ。

 これまで世界の発展に貢献する技術を編み出してきた。それによって王から表彰されたことだってある。魔女という名称ではあるが、そこそこ名のしれた研究者でもあるのだ。

 だが婚約者プリーマンはそれを理解してくれなかった。

 彼は私を悪女と呼び、いつも良くない感情ばかりをこちらへ刃物のように向けてきていた。

 そしてやがて。

「お前との婚約は破棄する」
「これまた急なのね」
「これまでは家のために我慢してきた、が、悪女を妻にするのは無理だ。それに、怪しい研究をしている悪女なんてもっと酷い。最悪と言えよう。それゆえ、もうお前とは縁を切る」

 こうして、この日、私とプリーマンの関係は破壊された。

 とはいえ、それはそれで良かったのかもしれないと、そう思う部分もあった。だってそうだろう、嫌われながら妻になるなんて、それはそれで辛いものがある。こちらが彼を大事に思っていたとしても、彼が私を大事に思わないなら、結ばれる意味も半減するというものだ。


 ◆


 後日、数年前から知り合いだった研究者仲間の男性に婚約破棄された話をすると、彼は「勝手な男!」と憤慨していた。

 で、その後、プリーマンは死んだ。

 死亡の情報を耳にした時は驚いた。
 彼は健康そうだったから。
 急死するなんて夢にも思っていなかったのだ。

 死因は不明だそうだが――謎の呪術に苦しんでいたという噂はある。


 ◆


 婚約破棄とプリーマン急死から数年、私は、研究者仲間の男性と結婚した。

 今は共に研究を続けている。
 私たちは夫婦だがその前に同士でもあるのだ。

 なんにせよ、彼は私が悪い魔女でないと理解しているし知っている――それが何よりもありがたい。

 私は悪女ではない。


◆終わり◆
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