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前編

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「君は視野が狭い。そのため俺とは会話の内容が合わない。ということで、婚約は破棄とする」

 六つ年上の婚約者オオガスから急にそう告げられてしまった。

 視野が狭いから婚約破棄。
 これは正直想定外。
 そのようなことが起きることがあるとは知らなかった。

「本気……ですか?」

 思わずこぼしてしまう。

「当たり前だろう」

 不愉快そうな顔をされてしまった。

 少しやらかしただろうか。
 でも仕方ないだろう、本当かどうか理解できなかったのだから。

「そう、ですか。分かりました。では、私は……これで去れば良いのでしょうか……?」
「そういうことだ」
「……分かりました。それでは……失礼します、さようなら」

 私は抗うことはせずオオガスの前から去った。

 その日、私が以前遊びがてら少しだけ買っていた『世界一周旅行が当たるカモ!? な楽しいラッキーくじ』が当選したことが明らかになった。

 しかも一等。
 当たったのはくじのウリとも言える『世界一周旅行』だ。

 かなり驚いたが、私は旅に出ることにした。

「まさかくじが当たるなんてね……」
「ごめん母さん」
「行ってしまうのが少し寂しいわ」
「大丈夫、警護つきだって」
「そうよね……ええ、そうよね! 楽しんできて。話聞かせてね!」
「ありがとう母さん」

 そうして始まる、世界一周旅行。
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