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前編

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「いいか! 明日までに五万字! 仕上げておけよ!」

 私は婚約者エドベスに監禁されている。
 そして小説を書かされている。
 指定の文字数書き終えるまで自由は一切なく、その指定の文字数というのがかなり多いため、何だかんだで結局自由時間はほとんどない。

 これがまだ興味のある内容の小説であれば良いのだが……書かされているのは彼が好きな内容のもの、私はまったく興味がなくどうでもいい内容なので、余計に辛い。

 だが、そんなある日、一日だけ自由が許される日がやって来た。

「今日は買い物に行く。ついてこい」
「……はい」

 こうしてかなり久々に外へ出られた私だったが、買い物のため出掛けた王都にてお忍びで街へ出てきていた王子と出会い、彼に見初められた。

「そういうことなので、悪いけれど、彼女は僕が貰いますね」
「ま、待て! 何という勝手なことを! 俺たちは婚約者同士なのだぞ!?」
「……金が目的ですか? 金ならあげますよ」

 そう言って、王子は袋に入った現金をエドベスに渡す。
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