上 下
1 / 1

自己中男とはさっさと離れるに限ります。

しおりを挟む
 好き、とか、一生傍にいて護る、とか、そんなことをいつも言っていたのに。

 いや、べつに、信じていたわけではないけれど――。

「あのさ、あんたとの婚約は破棄するわ」

 婚約者の彼フェールズはある日突然そう宣言した。

 婚約を希望したのは彼の方だ。それなのに自ら婚約破棄を告げるなんて。とてもすんなりとは理解できない。普通、婚約を希望した身としては、婚約破棄なんて告げられないものだろう。明らかに正当な理由がなければ。

 しかし彼はそれを平然と行った。
 裏切り行為に近い。

 とはいえ、それほど損害がないのに無駄な争いを起こすというのは労力の無駄だ。

 そういうことで、私は、彼の希望である婚約破棄を受け入れることにした。

 厄介事に巻き込まれたくないから。

 その後私は、婚約者の勝手極まりない行動にも寛容に対処した女として、社会的な評判を高めた。

 その時はそこまで考えることはできていなかったけれど。
 ただ、結果的に良い評価を得られたということは嬉しいことだ。

 一方フェールズはというと、婚約を希望しておきながら逆に婚約破棄をした自己中心的過ぎる男として、評価を大きく下げることとなったようだ。

 詳しくは知らないけれど。

 ただ、その評価の暴落によって、彼は人生における大きなチャンスを逃すこととなってしまったらしい。


◆終わり◆
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...