そんなことを理由に婚約破棄するなんて……不自然ではないですか?

四季

文字の大きさ
1 / 1

そんなことを理由に婚約破棄するなんて……不自然ではないですか?

しおりを挟む
「フリージア、君の鼻は僕の好みの鼻じゃない」
「え」
「よって! 婚約は破棄とする!」

 婚約者ヴィゴから告げられたのは想定外の言葉であった。

「え……あの、それは、一体どういう……?」
「だからそのままの意味さ」
「婚約破棄、ということですか?」
「ああ! そういうことさ。比喩とか何とかそういうのじゃない、言葉そのままの意味だよ」

 いや、まだしも、婚約破棄は分かるにしても。

 好みの鼻じゃない、って、どういうこと!?

 鼻なんて見えるものではないか。私の鼻がどんな鼻かなんて最初から分かっていたはずだ。性格や生活習慣とは違って見れば分かることなのだから。なのに、なぜ今になってそんなことで婚約破棄されなくてはならないのか。明らかに不自然だ。

「本当に、それが理由なのですか?」
「うるさいな! 何を疑ってるんだよ、不愉快だ!」

 一応確認しただけなのに……怒られてしまった。

「腹が立つ。もう二度と目の前に現れないで! 永遠にさよなら、だ!」


 ◆


 ああして婚約破棄された私だったが、実家へ帰った直後に親の知り合いの資産家の人が「うちの息子に良い人いないかのぉ」と言っていたことから私が紹介され一度実際に会ってみることとなる。

 そして、私たちはぴたりとくっついた。

 花を見るという共通の趣味があったこともあって、初対面のその日に一気に仲良しになった。

 その後交際を経て結婚。
 皆から祝われてのとても綺麗な結婚となった。

 ちなみにヴィゴはというと、親と住んでいた家に訓練用の砲弾が命中しそれに巻き込まれて亡くなってしまったそうだ。

 また、彼の亡骸には鼻がなかったらしい。

 鼻の呪いか何かだろうか?
 どうして鼻なのかはよく分からないけれど……。

 ただ、彼は幸せにはなれなかったようだ。

 その最期は驚くくらい呆気ないものであった。


◆終わり◆
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ある早朝、耳もとにひんやりとした感触――って、え!? これ何ですか? どういうことなんです!?

四季
恋愛
ある早朝、耳もとにひんやりとした感触――って、え!? これ何ですか? どういうことなんです!?

この私から都合よく逃げられると思ったら大間違いですわ。代わりに借金返済した分のお金はきちんと返していただきます。

四季
恋愛
この私から都合よく逃げられると思ったら大間違いですわ。 代わりに借金返済した分のお金はきちんと返していただきます。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

幼馴染みで婚約者だった彼に切り捨てられてしまいましたが、自分にできることをしながら生きていたところ意外な良縁に恵まれました。

四季
恋愛
マリエ・フローレニシアとダット・ティオドールは幼馴染みであり婚約者同士。 仲は悪くなかった。 だが、ダットがアレンティーナという女性と仕事で知り合った時から、二人の関係は崩れていって……。

晩餐会の会場に、ぱぁん、と乾いた音が響きました。どうやら友人でもある女性が婚約破棄されてしまったようです。

四季
恋愛
晩餐会の会場に、ぱぁん、と乾いた音が響きました。 どうやら友人でもある女性が婚約破棄されてしまったようです。

彼がいつも言っていた「愛してる」はどうやら嘘だったようです。~彼はざまぁな目に遭ったようですね? いやはや、ざまぁ~

四季
恋愛
彼がいつも言っていた「愛してる」はどうやら嘘だったようです。

もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?

四季
恋愛
もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?

不実なあなたに感謝を

黒木メイ
恋愛
王太子妃であるベアトリーチェと踊るのは最初のダンスのみ。落ち人のアンナとは望まれるまま何度も踊るのに。王太子であるマルコが誰に好意を寄せているかははたから見れば一目瞭然だ。けれど、マルコが心から愛しているのはベアトリーチェだけだった。そのことに気づいていながらも受け入れられないベアトリーチェ。そんな時、マルコとアンナがとうとう一線を越えたことを知る。――――不実なあなたを恨んだ回数は数知れず。けれど、今では感謝すらしている。愚かなあなたのおかげで『幸せ』を取り戻すことができたのだから。 ※異世界転移をしている登場人物がいますが主人公ではないためタグを外しています。 ※曖昧設定。 ※一旦完結。 ※性描写は匂わせ程度。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載予定。

処理中です...