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第三回「元気なタイプと静かなタイプ」
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あたし、ハピネス・ピース!
イツモさんの家に入れてもらえたから、クライネくんに会いに行くよ!
クライネくんはあたしより年上。つまり、お兄さんなんだ。でもとっても大人しいから、あたしは最初、つい『くん』なんて付けて呼んでしまったの。でも、クライネくんはそれを嫌がったりはしなかったから、今でも『くん』を付けて呼んでいるんだ。
ちょっと失礼かもしれないけどね。
でも、本人が嫌がっていないからセーフのはずなの!
「こんにちはっ」
クライネくんのお部屋の前へ到着したあたしは、扉をコンコンと軽くノック。そして、返答を待つ。
これは彼と決めたことだから、絶対に守るんだ。
しばらくすると……ほら。
部屋の中から、クライネくんが出てきたよ。
「こんにちは!」
小さく開けた扉の隙間から首から上だけを出すクライネくんに、あたしは、元気よく挨拶をする。
挨拶は大事だよね!
元気いっぱいの挨拶は、幸せしか生まないよね!
「……こん……に……ちは」
「入ってもいい?」
「は、はい……今か……ら……開けます……」
クライネくんはそう言って、今度は人一人が通れるくらいに、扉を開けてくれた。
何なら一気に全開にしちゃえばいいのに! ってあたしは思うけど、それは多分、あたしがこんな性格だからなんだろうな。
ま、気にしてないけどね!
良いところも悪いところも、誰にでもあるものだし!
———
僕の名前は、クライネ・イツモです。
ハピネスさんがいよいよ僕の自室へやって来ました。
彼女が僕の部屋に訪ねてくるのは、決して珍しいことではありません。なので、本当は、こんなに色々気にすることはないはずなのです。胸の鼓動を速める必要なんて、ないはず。友人のように自然に振る舞えば良いのです。
しかし、僕にはそれができません。
なぜなら、友人というものを知らないからです。
正直、僕はこれまで、友人がいませんでした。けれど、そのこと自体は、あまり気にしていなかったのです。家には使用人がいますから、普通に暮らしていくうえで友人の必要性は低かったのです。
ただ、ハピネスさんと会うようになってから、もっと人間と関わる訓練をしておくべきだったと思うようになりました。
僕が人見知りなせいでハピネスさんが楽しくなかったとしたら、大問題だからです。
「お邪魔しまーす!」
「あ、は……はい……どうぞ」
ハピネスさんは今日も元気いっぱい。
その様子を見ているだけで、僕は今日も幸せです。
本当はもっとリードしていきたい。自ら行動を起こし、彼女の笑顔を増やしていきたい。そんな夢をみることもあります。しかし、それは無理なこと。僕は潔く諦めます。
今の僕にできることは、彼女を不快な気分にさせないこと。
ただ、それだけです。
「ハピネスさん……そ、その……」
「あーっ。また『さん』なんて付けるー! それは駄目って言ったよね?」
なんてことだ。
話しかけてみたら、怒られてしまいました。
「そっ、そうでし……た……すみ……ません……」
「ハピネス『ちゃん』でいいよ!」
「あ、はい……ありが……とう……ごじゃ、っ……」
これまた、なんてことだ。
緊張し過ぎたせいで発音をミスしてしまいました。
イツモさんの家に入れてもらえたから、クライネくんに会いに行くよ!
クライネくんはあたしより年上。つまり、お兄さんなんだ。でもとっても大人しいから、あたしは最初、つい『くん』なんて付けて呼んでしまったの。でも、クライネくんはそれを嫌がったりはしなかったから、今でも『くん』を付けて呼んでいるんだ。
ちょっと失礼かもしれないけどね。
でも、本人が嫌がっていないからセーフのはずなの!
「こんにちはっ」
クライネくんのお部屋の前へ到着したあたしは、扉をコンコンと軽くノック。そして、返答を待つ。
これは彼と決めたことだから、絶対に守るんだ。
しばらくすると……ほら。
部屋の中から、クライネくんが出てきたよ。
「こんにちは!」
小さく開けた扉の隙間から首から上だけを出すクライネくんに、あたしは、元気よく挨拶をする。
挨拶は大事だよね!
元気いっぱいの挨拶は、幸せしか生まないよね!
「……こん……に……ちは」
「入ってもいい?」
「は、はい……今か……ら……開けます……」
クライネくんはそう言って、今度は人一人が通れるくらいに、扉を開けてくれた。
何なら一気に全開にしちゃえばいいのに! ってあたしは思うけど、それは多分、あたしがこんな性格だからなんだろうな。
ま、気にしてないけどね!
良いところも悪いところも、誰にでもあるものだし!
———
僕の名前は、クライネ・イツモです。
ハピネスさんがいよいよ僕の自室へやって来ました。
彼女が僕の部屋に訪ねてくるのは、決して珍しいことではありません。なので、本当は、こんなに色々気にすることはないはずなのです。胸の鼓動を速める必要なんて、ないはず。友人のように自然に振る舞えば良いのです。
しかし、僕にはそれができません。
なぜなら、友人というものを知らないからです。
正直、僕はこれまで、友人がいませんでした。けれど、そのこと自体は、あまり気にしていなかったのです。家には使用人がいますから、普通に暮らしていくうえで友人の必要性は低かったのです。
ただ、ハピネスさんと会うようになってから、もっと人間と関わる訓練をしておくべきだったと思うようになりました。
僕が人見知りなせいでハピネスさんが楽しくなかったとしたら、大問題だからです。
「お邪魔しまーす!」
「あ、は……はい……どうぞ」
ハピネスさんは今日も元気いっぱい。
その様子を見ているだけで、僕は今日も幸せです。
本当はもっとリードしていきたい。自ら行動を起こし、彼女の笑顔を増やしていきたい。そんな夢をみることもあります。しかし、それは無理なこと。僕は潔く諦めます。
今の僕にできることは、彼女を不快な気分にさせないこと。
ただ、それだけです。
「ハピネスさん……そ、その……」
「あーっ。また『さん』なんて付けるー! それは駄目って言ったよね?」
なんてことだ。
話しかけてみたら、怒られてしまいました。
「そっ、そうでし……た……すみ……ません……」
「ハピネス『ちゃん』でいいよ!」
「あ、はい……ありが……とう……ごじゃ、っ……」
これまた、なんてことだ。
緊張し過ぎたせいで発音をミスしてしまいました。
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