最強剣士カザフさん、のんびり冒険者生活

四季

文字の大きさ
39 / 50

三十九話「カザフさん、三人組の処分を聞く」

しおりを挟む
 カザフが提供した情報のおかげで、リズはさりげなく優勝。
 彼女は優勝を目指してはいなかったようだが、一位を取れたことを喜んではいるようだった。
 ハイテンション結果発表があり、上位の者たちには祝いの品が渡され、その後、突然真面目なアナウンスが始まる。

『今大会内にて、他参加者への悪意を持った行為が確認されましたので、そのことについて少しお話させていただきます』

 何の前触れもなく始まった真剣なアナウンスに、皆、戸惑いを隠せない。

『罰則が与えられることとなったのは、三名です』

 こんな風に説明があるとは思っていなかったため、カザフは驚いた。が、驚いているのは彼だけではなくて。彼のすぐ右隣に立っていたリズも、同じように驚いている様子だった。

『他参加者の成果の横取り、罪をごまかす行動、それらの行動が見られた一名。その方には、冒険者としての活動を一年間禁止する処分を下すこととなりました』

 辺りがざわめく。
 長期に亘って影響が出る処分内容に、衝撃を受けていたのかもしれない。

「処分なんて、本当にあるのね……」
「驚きだよね」

 リズとカザフはそんな風に言葉を交わす。
 もちろん、小さな声で。

『続きまして、他参加者への中程度の暴力行為が見られた一名。その方には、冒険者としての活動を半年間禁止することと罰金という処分が下りました』

 参加者全員の前でわざわざ一つ一つ言っていくとは思っていなかったため、カザフは少し動揺している。

『そして、他参加者の成果の大量横取りが確認された一名。その方には、これまでの大会での受賞をすべてなかったことにするという処置が下されます』

 アナウンスを聞いて、その他大勢の冒険者たちはざわめく。三人に与えられたそこそこ厳しい罰に、皆、驚き戸惑っているようだ。

『また、三名に今後また似たような行為が見られた場合は、冒険者としての活動資格を剥奪する場合もあります。皆様もどうか平和的に活動なさって下さい。それでは、失礼致しました』

 真面目なアナウンスは終わる。
 こうして、今回の探索大会は終了した。


 ◆


 大会が終わった後、カザフは、濡れてしまった服を着替えたリズと合流する。

「着替え、お疲れ」
「ありがとう」

 探索大会は無事終了した。
 後はもう、帰るだけだ。
 まだ日は落ちていない。そのため、速やかにサーンスを出れば、夜のうちにナナのところへ帰ることができるはずである。

「じゃあ帰ろうか」
「そうね」

 リズは黄金に輝くトロフィーを持っている。優勝によって手に入れたものだ。二位三位でなく一位なだけあって、高さ三十センチほどはある豪華なトロフィーである。

「それにしても、そのトロフィー立派だね。凄いや」

 長い間冒険者として活動してきたカザフだが、探索大会の優勝トロフィーを見るのは初めてだ。その迫力に、カザフは圧倒されっぱなしである。

「カザフさんがアドバイスして下さったおかげよ。あのアドバイスがなければ、真珠、あんなに集められなかったわ」

 リズは謙虚だった。決して、自分の力で優勝した、とは考えていない。的確なアドバイスをくれたカザフに心から感謝しているし、感謝の気持ちをきちんと伝えようとしている。

「ううん。そんなことないよ」
「そんなことあるわ」
「え。『そんなことある』って、おかしな表現だね」
「……そうね」

 リズとカザフは、そんな風にあっさりとした会話を楽しみながら、二人で馬車に乗り込む。
 この馬車で、ナナがいる村へ帰るのだ。


 ◆


 二人を乗せた馬車がナナのいる村に到着した時、辺りは既に暗くなっていた。
 何もなくても人の気配のない、過疎化した村。陽が落ちた後だと、より一層不気味な雰囲気になっている。

 だが、一人ではない。
 それゆえ、リズはちっとも不安を抱いていない様子だった。

 一方カザフはというと、早く帰ってナナに会いたいという気持ちに胸を満たされている。

 たった一晩離れていただけなのに、言葉にならないくらい彼女に会いたい。
 それは、カザフにとって初めての経験だった。

 落ち着かない様子のカザフを見て、リズは言葉をかける。

「何だかそわそわしているわね、カザフさん」

 声をかけられたカザフはすぐに返す。

「うん。ナナちゃんに会いたくって」

 勇ましい巨体からはとても想像できないような、可愛らしい理由。十代の少女のような愛らしい理由に、リズは思わずくすっと笑ってしまう。

「初々しいわね」
「そうかな?」
「えぇ。あたしはそう思うわ」

 リズとカザフは隣同士のまま歩いていく。
 目的地である、ナナのアクセサリー屋に向かって。

 男女が二人きりで夜の道を歩んでいる。
 でも、リズとカザフの間に特別な感情はない。特に何かこれといった進展があるわけでもない。

 二人の関係は、あくまで、依頼主とそれを受けた人物。

 それ以上でもそれ以下でもないのだ。

「着いたわね」

 ナナのアクセサリー屋の前に到着するなり、リズが言った。
 カザフは扉をコンコンとノックする。
 すぐに返事はなかった。が、慌てさせてはならないので、二度目のノックはすぐにはしない。扉の前に立って、少し待ってみる。

 ——するとやがて扉は開いた。

「あ! カザフさん!」

 恐る恐る出てきたのはナナ。
 訝しむような顔をしていた彼女は、カザフを見るや否や、明るい声を発する。

「ただいま、ナナちゃん」
「お帰りなさい!」

 ナナは扉を大きく開けてカザフを迎え入れる。
 彼の隣にいたリズは入って良いのか分からず、一瞬困惑したような顔をした。
 そんな彼女に、ナナは放つ。

「リズさんもどうぞ!」
「あら……助かるわ。ありがとう」

 その晩、カザフはナナと一緒に眠った。
 特別なことなんて何もない。ただ共に寝ただけのことで。

 そしてリズも、結局、ナナの家に一泊した。それは、ナナが提案してのことであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

妖精族を統べる者

暇野無学
ファンタジー
目覚めた時は死の寸前であり、二人の意識が混ざり合う。母親の死後村を捨てて森に入るが、そこで出会ったのが小さな友人達。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

祈りの果てに ― 無限の箱庭で笑う者 ―

酒の飲めない飲んだくれ
ファンタジー
俺は一度、終わりを迎えた。 でも――もう一度だけ、生きてみようと思った。 女神に導かれ、空の海を旅する青年。 特別な船と、「影」の船員たちと共に、無限の空を渡る。 絶望の果てに与えられた“過剰な恩恵”。 それは、ひとりの女神の「願い」から生まれたものだった。 彼の旅路はやがて、女神の望みそのものを問い直す。 ――絶望の果て、その先から始まる、再生のハイファンタジー戦記。 その歩みが世界を、そして自分自身を変えていく。 これは、ただの俺の旅の物語。 『祈りの果てに ― 無限の箱庭で笑う者 ―』

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

処理中です...