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三十九話「カザフさん、三人組の処分を聞く」
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カザフが提供した情報のおかげで、リズはさりげなく優勝。
彼女は優勝を目指してはいなかったようだが、一位を取れたことを喜んではいるようだった。
ハイテンション結果発表があり、上位の者たちには祝いの品が渡され、その後、突然真面目なアナウンスが始まる。
『今大会内にて、他参加者への悪意を持った行為が確認されましたので、そのことについて少しお話させていただきます』
何の前触れもなく始まった真剣なアナウンスに、皆、戸惑いを隠せない。
『罰則が与えられることとなったのは、三名です』
こんな風に説明があるとは思っていなかったため、カザフは驚いた。が、驚いているのは彼だけではなくて。彼のすぐ右隣に立っていたリズも、同じように驚いている様子だった。
『他参加者の成果の横取り、罪をごまかす行動、それらの行動が見られた一名。その方には、冒険者としての活動を一年間禁止する処分を下すこととなりました』
辺りがざわめく。
長期に亘って影響が出る処分内容に、衝撃を受けていたのかもしれない。
「処分なんて、本当にあるのね……」
「驚きだよね」
リズとカザフはそんな風に言葉を交わす。
もちろん、小さな声で。
『続きまして、他参加者への中程度の暴力行為が見られた一名。その方には、冒険者としての活動を半年間禁止することと罰金という処分が下りました』
参加者全員の前でわざわざ一つ一つ言っていくとは思っていなかったため、カザフは少し動揺している。
『そして、他参加者の成果の大量横取りが確認された一名。その方には、これまでの大会での受賞をすべてなかったことにするという処置が下されます』
アナウンスを聞いて、その他大勢の冒険者たちはざわめく。三人に与えられたそこそこ厳しい罰に、皆、驚き戸惑っているようだ。
『また、三名に今後また似たような行為が見られた場合は、冒険者としての活動資格を剥奪する場合もあります。皆様もどうか平和的に活動なさって下さい。それでは、失礼致しました』
真面目なアナウンスは終わる。
こうして、今回の探索大会は終了した。
◆
大会が終わった後、カザフは、濡れてしまった服を着替えたリズと合流する。
「着替え、お疲れ」
「ありがとう」
探索大会は無事終了した。
後はもう、帰るだけだ。
まだ日は落ちていない。そのため、速やかにサーンスを出れば、夜のうちにナナのところへ帰ることができるはずである。
「じゃあ帰ろうか」
「そうね」
リズは黄金に輝くトロフィーを持っている。優勝によって手に入れたものだ。二位三位でなく一位なだけあって、高さ三十センチほどはある豪華なトロフィーである。
「それにしても、そのトロフィー立派だね。凄いや」
長い間冒険者として活動してきたカザフだが、探索大会の優勝トロフィーを見るのは初めてだ。その迫力に、カザフは圧倒されっぱなしである。
「カザフさんがアドバイスして下さったおかげよ。あのアドバイスがなければ、真珠、あんなに集められなかったわ」
リズは謙虚だった。決して、自分の力で優勝した、とは考えていない。的確なアドバイスをくれたカザフに心から感謝しているし、感謝の気持ちをきちんと伝えようとしている。
「ううん。そんなことないよ」
「そんなことあるわ」
「え。『そんなことある』って、おかしな表現だね」
「……そうね」
リズとカザフは、そんな風にあっさりとした会話を楽しみながら、二人で馬車に乗り込む。
この馬車で、ナナがいる村へ帰るのだ。
◆
二人を乗せた馬車がナナのいる村に到着した時、辺りは既に暗くなっていた。
何もなくても人の気配のない、過疎化した村。陽が落ちた後だと、より一層不気味な雰囲気になっている。
だが、一人ではない。
それゆえ、リズはちっとも不安を抱いていない様子だった。
一方カザフはというと、早く帰ってナナに会いたいという気持ちに胸を満たされている。
たった一晩離れていただけなのに、言葉にならないくらい彼女に会いたい。
それは、カザフにとって初めての経験だった。
落ち着かない様子のカザフを見て、リズは言葉をかける。
「何だかそわそわしているわね、カザフさん」
声をかけられたカザフはすぐに返す。
「うん。ナナちゃんに会いたくって」
勇ましい巨体からはとても想像できないような、可愛らしい理由。十代の少女のような愛らしい理由に、リズは思わずくすっと笑ってしまう。
「初々しいわね」
「そうかな?」
「えぇ。あたしはそう思うわ」
リズとカザフは隣同士のまま歩いていく。
目的地である、ナナのアクセサリー屋に向かって。
男女が二人きりで夜の道を歩んでいる。
でも、リズとカザフの間に特別な感情はない。特に何かこれといった進展があるわけでもない。
二人の関係は、あくまで、依頼主とそれを受けた人物。
それ以上でもそれ以下でもないのだ。
「着いたわね」
ナナのアクセサリー屋の前に到着するなり、リズが言った。
カザフは扉をコンコンとノックする。
すぐに返事はなかった。が、慌てさせてはならないので、二度目のノックはすぐにはしない。扉の前に立って、少し待ってみる。
——するとやがて扉は開いた。
「あ! カザフさん!」
恐る恐る出てきたのはナナ。
訝しむような顔をしていた彼女は、カザフを見るや否や、明るい声を発する。
「ただいま、ナナちゃん」
「お帰りなさい!」
ナナは扉を大きく開けてカザフを迎え入れる。
彼の隣にいたリズは入って良いのか分からず、一瞬困惑したような顔をした。
そんな彼女に、ナナは放つ。
「リズさんもどうぞ!」
「あら……助かるわ。ありがとう」
その晩、カザフはナナと一緒に眠った。
特別なことなんて何もない。ただ共に寝ただけのことで。
そしてリズも、結局、ナナの家に一泊した。それは、ナナが提案してのことであった。
彼女は優勝を目指してはいなかったようだが、一位を取れたことを喜んではいるようだった。
ハイテンション結果発表があり、上位の者たちには祝いの品が渡され、その後、突然真面目なアナウンスが始まる。
『今大会内にて、他参加者への悪意を持った行為が確認されましたので、そのことについて少しお話させていただきます』
何の前触れもなく始まった真剣なアナウンスに、皆、戸惑いを隠せない。
『罰則が与えられることとなったのは、三名です』
こんな風に説明があるとは思っていなかったため、カザフは驚いた。が、驚いているのは彼だけではなくて。彼のすぐ右隣に立っていたリズも、同じように驚いている様子だった。
『他参加者の成果の横取り、罪をごまかす行動、それらの行動が見られた一名。その方には、冒険者としての活動を一年間禁止する処分を下すこととなりました』
辺りがざわめく。
長期に亘って影響が出る処分内容に、衝撃を受けていたのかもしれない。
「処分なんて、本当にあるのね……」
「驚きだよね」
リズとカザフはそんな風に言葉を交わす。
もちろん、小さな声で。
『続きまして、他参加者への中程度の暴力行為が見られた一名。その方には、冒険者としての活動を半年間禁止することと罰金という処分が下りました』
参加者全員の前でわざわざ一つ一つ言っていくとは思っていなかったため、カザフは少し動揺している。
『そして、他参加者の成果の大量横取りが確認された一名。その方には、これまでの大会での受賞をすべてなかったことにするという処置が下されます』
アナウンスを聞いて、その他大勢の冒険者たちはざわめく。三人に与えられたそこそこ厳しい罰に、皆、驚き戸惑っているようだ。
『また、三名に今後また似たような行為が見られた場合は、冒険者としての活動資格を剥奪する場合もあります。皆様もどうか平和的に活動なさって下さい。それでは、失礼致しました』
真面目なアナウンスは終わる。
こうして、今回の探索大会は終了した。
◆
大会が終わった後、カザフは、濡れてしまった服を着替えたリズと合流する。
「着替え、お疲れ」
「ありがとう」
探索大会は無事終了した。
後はもう、帰るだけだ。
まだ日は落ちていない。そのため、速やかにサーンスを出れば、夜のうちにナナのところへ帰ることができるはずである。
「じゃあ帰ろうか」
「そうね」
リズは黄金に輝くトロフィーを持っている。優勝によって手に入れたものだ。二位三位でなく一位なだけあって、高さ三十センチほどはある豪華なトロフィーである。
「それにしても、そのトロフィー立派だね。凄いや」
長い間冒険者として活動してきたカザフだが、探索大会の優勝トロフィーを見るのは初めてだ。その迫力に、カザフは圧倒されっぱなしである。
「カザフさんがアドバイスして下さったおかげよ。あのアドバイスがなければ、真珠、あんなに集められなかったわ」
リズは謙虚だった。決して、自分の力で優勝した、とは考えていない。的確なアドバイスをくれたカザフに心から感謝しているし、感謝の気持ちをきちんと伝えようとしている。
「ううん。そんなことないよ」
「そんなことあるわ」
「え。『そんなことある』って、おかしな表現だね」
「……そうね」
リズとカザフは、そんな風にあっさりとした会話を楽しみながら、二人で馬車に乗り込む。
この馬車で、ナナがいる村へ帰るのだ。
◆
二人を乗せた馬車がナナのいる村に到着した時、辺りは既に暗くなっていた。
何もなくても人の気配のない、過疎化した村。陽が落ちた後だと、より一層不気味な雰囲気になっている。
だが、一人ではない。
それゆえ、リズはちっとも不安を抱いていない様子だった。
一方カザフはというと、早く帰ってナナに会いたいという気持ちに胸を満たされている。
たった一晩離れていただけなのに、言葉にならないくらい彼女に会いたい。
それは、カザフにとって初めての経験だった。
落ち着かない様子のカザフを見て、リズは言葉をかける。
「何だかそわそわしているわね、カザフさん」
声をかけられたカザフはすぐに返す。
「うん。ナナちゃんに会いたくって」
勇ましい巨体からはとても想像できないような、可愛らしい理由。十代の少女のような愛らしい理由に、リズは思わずくすっと笑ってしまう。
「初々しいわね」
「そうかな?」
「えぇ。あたしはそう思うわ」
リズとカザフは隣同士のまま歩いていく。
目的地である、ナナのアクセサリー屋に向かって。
男女が二人きりで夜の道を歩んでいる。
でも、リズとカザフの間に特別な感情はない。特に何かこれといった進展があるわけでもない。
二人の関係は、あくまで、依頼主とそれを受けた人物。
それ以上でもそれ以下でもないのだ。
「着いたわね」
ナナのアクセサリー屋の前に到着するなり、リズが言った。
カザフは扉をコンコンとノックする。
すぐに返事はなかった。が、慌てさせてはならないので、二度目のノックはすぐにはしない。扉の前に立って、少し待ってみる。
——するとやがて扉は開いた。
「あ! カザフさん!」
恐る恐る出てきたのはナナ。
訝しむような顔をしていた彼女は、カザフを見るや否や、明るい声を発する。
「ただいま、ナナちゃん」
「お帰りなさい!」
ナナは扉を大きく開けてカザフを迎え入れる。
彼の隣にいたリズは入って良いのか分からず、一瞬困惑したような顔をした。
そんな彼女に、ナナは放つ。
「リズさんもどうぞ!」
「あら……助かるわ。ありがとう」
その晩、カザフはナナと一緒に眠った。
特別なことなんて何もない。ただ共に寝ただけのことで。
そしてリズも、結局、ナナの家に一泊した。それは、ナナが提案してのことであった。
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