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後編

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「そうか。それが君の父親と義母の悪行なのだな」
「……はい」

 辛い人生でした。
 でも、今の私はもう、自分を不幸だとは思っていません。

 こきつかわれる日々の中で知り合ったとある権力ある男性と親しくなり、私の人生の苦しみを理解してもらうことができたからです。

「身内を自分勝手な理由で毒殺。再婚相手とその娘が娘を虐め、父親もそれを見逃していた。君の話が事実なら、それらはすべて罪だ」

 傷つけられたのが私だけだったなら、こうして理解してもらえるだけで満足したと思うのです。私はもう二度とあの家には帰らない。だからこれ以上あの人たちと関わる必要もなかった、簡単なことだったのでしょう。

 けれど、理不尽に傷つけられたのは私だけではありません。

 実の母親もまた被害者。それも、限りなく理不尽な殺され方をしました。その罪をなかったことにはできないと思うので、私は、あの人たちを放っておこうとは思えません。

「安心してくれ。彼らに罰を与えることは難しいことではない」
「ありがとうございます……!」

 いつか私が死んだ時、母親と笑顔で再会できますように——そう願って、私は生きる。


 父親、義母、義母の娘。三人とも無事罪人とすることができたようです。

 父親は毒殺の罪といじめを見て見ぬふりした罪で牢屋送りに。自由も財産も失い、ただの一人の罪人として厳しい教育を受けているそうです。名を奪われ、奴隷のように働かされ、そんな風にして生きていると聞きました。

 義母はというと、毒殺の罪と義理の娘である私を虐めた罪によって、女性犯罪者が集められている施設に収容されたとか。愛していたと思われる私の父親とも、もう二度と会えません。

 そして義母の娘。彼女には殺人の罪はありませんでした。なぜなら、私の実母を殺すことに協力してはいなかったからです。ただ、捏造した悪口を言いふらすという他者の名誉を傷つけるような行為を繰り返したため、罰を受けたと聞きます。

 また、彼女は実は良家の息子と婚約していたそうなのですが、婚約破棄されたそうです。


◆終わり◆
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