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前編
しおりを挟む「お前との婚約、破棄することにしたよ」
その日は雨降りだった。
けれども彼に呼び出されて。
その時は嬉しかった。
彼の脳内に私という存在はあるのだ、そう思えたから。
でも間違いだった。
「もう終わりにする。お前とは歩まない」
呼び出されたのは終わりを告げるためだったのだ。
「そもそも、さ。お前との婚約を決めたのは親だしさ。俺はもともと好きじゃなかったんだ。まぁ自分でも分かるだろ? お前に俺が好きになるような要素があるわけがない。お前だって、さすがに、自分でも分かっているだろ」
一瞬でも喜んだ自分が馬鹿みたい。何も知らず浮かれて。明るい未来を期待して、楽しい気分になって……愚かだった自分に腹が立つ。愛されるはずもない、構ってもらえるはずもない、でもそれを見ようとしなかった自分の愚かさ。どこまでも呆れる、自分で自分を憎く思ってしまう。
「貧相な身体つき、中の中の顔面、忠実でない、性格もぱっとしない、華がない、あれこれうるさい、寛容さがない、尽くしてくれない、家事に鳴れておらずその技術もない――お前は女性として終わってるんだ」
こうして私は彼に捨てられた。
もう戻れない、婚約破棄されてしまったから。
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