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前編
しおりを挟む生まれ育った国アナベルの王子であるガートン・フォフス・アナベルと婚約していた私だったが。
「貴様とはもうやっていかないことにした! よって、婚約は破棄とする!」
彼は突然そんなことを言い、私との関係を無理矢理終わりへと導いた。
……噂によれば彼には親しくしている女性が他にいるとか何とか。
ただ、彼はそういうことは特別口にはしなくて。
彼はただ私との関係を終わらせた――それだけであった。
こうして、まともな理由も聞かせてもらえないまま婚約破棄された私は、城から追い出されることとなる。
しかし実家へ戻ることもできなかった。
なぜって、私の両親は私の婚約が遅めであったことをずっと怒っていたのだ。
ようやく婚約できてその怒りは収まったのだけれど。
そんな両親のもとへ「婚約破棄された」なんて言って戻ったら、どんな目に遭わされるかは目に見えている。
王子には捨てられた。
でも両親のもとへも戻れない。
こんな状態で、一体どうしろというのか……?
そんな風に困り果てていた私は、森で少し自然に浸ることにしたのだが――そのままうっかり眠りに落ちてしまい、森の中で眠る怪しい女になってしまった。
が、そこで奇跡が起こる。
『貴女はこれまでまっとうに生きていらっしゃったのですね、しかし報われなかった、幸せな環境で暮らすことはできなかったのでしょう』
目を覚ました時、すぐそこにいたのは木の精。
大樹に顔を描いたような姿をしている。
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