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1話「魔力を持っていた私は」
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生まれつき魔力を持っていた私。
親が魔法に理解のある人たちだったこともあって、幼い頃から、その特別な力を使っては褒められてきた。
この力があれば、ない人にはできないことができる。
私にしかできないことがある。
私には人のためにできることがある。
そう思うと嬉しくて――だからこれから先も魔法を世のため人のために使っていこうと思っていた。
けれどもそのすべてを否定されるような日が訪れてしまう。
「ルレツィア! 魔力を持った君と生きてゆくのは、やはり無理だ。よって、婚約は破棄とする!」
私にはアドムという婚約者がいるのだが、その彼から、魔力を持っていることを理由に婚約破棄されてしまったのだ。
「婚約破棄? ……なぜですか」
「は? うるさいな。なぜ? そんなに理由が聞きたいのか? はは、必死だな」
「理由を教えてください」
「ああいいさ! なら教えてやる! 君のことを嫌っているのだよ、母が、な」
アドムはグレーの瞳を物騒に光らせながら言葉を並べる。
「母が言うには、魔力を持つ女魔法を使う女は、魔女、穢れた人間だそうだ。そのような血を我が家の高貴な血に混ぜたなら、この家の格まで下がってしまう。なるほどそうか、と思ったよ。俺とて母のすべてを信じるわけではないが、この件に関しては納得した。で、それと同時に、君を妻としては見れないだろうと思うようになったのだ。そうして婚約破棄を決めた」
彼は長い主張を発した後に、冷ややな視線をこちらへ向けた。
「もういいか? 分かったならとっとと俺の前から消えてくれ、穢れた魔女がいつまでもここに居座ろうとするな」
「分かりました。それでは、私はこれで。失礼します」
「ああ、さらば」
私はこれまで魔法を使えることを誇りに思っていた。人のために何かできる、その力が魔力であり魔法を使えることだと思っていたから、良いものと思っていたのだ。実際、この力によって笑顔になってくれた人だっていた。
でも違ったの――?
すべての人を笑顔にできるわけではなかった。
むしろ嫌われる原因となってしまった。
この力ゆえに婚約者に嫌われ切り捨てられた――そう思うと切なくて、もう当分魔力とか魔法とかは忘れたい、というような気分だった。
こうして実家へ帰った私は、両親に事情を明かし、婚約者のいない生活へ戻ってゆく。
「ルレツィア、貴女は悪くないわ。貴女は人々のためにその力を使っている、それは私たちの誇りよ。ただ理解がなかっただけで、今回のことはただのちょっとした不幸。そんなに気にすることはないのよ」
母はそう言ってくれた。
「ルレツィア、己を責めることはない。我々はお前を愛しているし、たとえどのようなことになろうともお前を責めはしない。いや、あまりに道を外れたことをしていたなら注意はするだろうが……そうでなければお前を悪く言うようなことはしないから、安心しろ」
父もそう言ってくれた。
私の能力ゆえに切り捨てられたことは辛く、ただ、両親が味方でいてくれたことはとても心強かった。
それからしばらくは体調が優れず。婚約破棄を受け入れはしたものの、時折急に切なくなって、時には涙が出ることもあった。母はいつも気にかけてくれていて、私の部屋にお菓子を持ってきてくれたり声をかけてくれたりした。それに支えられながらも、いまいちすっきりできない日々を生きていた。
以前のように魔法を使う気にはなれなかった。
そもそも魔法というものを思い出したくなかったのだ。
この力を人のために使える幸福――この時はそれすら感じられなくなっていた。
親が魔法に理解のある人たちだったこともあって、幼い頃から、その特別な力を使っては褒められてきた。
この力があれば、ない人にはできないことができる。
私にしかできないことがある。
私には人のためにできることがある。
そう思うと嬉しくて――だからこれから先も魔法を世のため人のために使っていこうと思っていた。
けれどもそのすべてを否定されるような日が訪れてしまう。
「ルレツィア! 魔力を持った君と生きてゆくのは、やはり無理だ。よって、婚約は破棄とする!」
私にはアドムという婚約者がいるのだが、その彼から、魔力を持っていることを理由に婚約破棄されてしまったのだ。
「婚約破棄? ……なぜですか」
「は? うるさいな。なぜ? そんなに理由が聞きたいのか? はは、必死だな」
「理由を教えてください」
「ああいいさ! なら教えてやる! 君のことを嫌っているのだよ、母が、な」
アドムはグレーの瞳を物騒に光らせながら言葉を並べる。
「母が言うには、魔力を持つ女魔法を使う女は、魔女、穢れた人間だそうだ。そのような血を我が家の高貴な血に混ぜたなら、この家の格まで下がってしまう。なるほどそうか、と思ったよ。俺とて母のすべてを信じるわけではないが、この件に関しては納得した。で、それと同時に、君を妻としては見れないだろうと思うようになったのだ。そうして婚約破棄を決めた」
彼は長い主張を発した後に、冷ややな視線をこちらへ向けた。
「もういいか? 分かったならとっとと俺の前から消えてくれ、穢れた魔女がいつまでもここに居座ろうとするな」
「分かりました。それでは、私はこれで。失礼します」
「ああ、さらば」
私はこれまで魔法を使えることを誇りに思っていた。人のために何かできる、その力が魔力であり魔法を使えることだと思っていたから、良いものと思っていたのだ。実際、この力によって笑顔になってくれた人だっていた。
でも違ったの――?
すべての人を笑顔にできるわけではなかった。
むしろ嫌われる原因となってしまった。
この力ゆえに婚約者に嫌われ切り捨てられた――そう思うと切なくて、もう当分魔力とか魔法とかは忘れたい、というような気分だった。
こうして実家へ帰った私は、両親に事情を明かし、婚約者のいない生活へ戻ってゆく。
「ルレツィア、貴女は悪くないわ。貴女は人々のためにその力を使っている、それは私たちの誇りよ。ただ理解がなかっただけで、今回のことはただのちょっとした不幸。そんなに気にすることはないのよ」
母はそう言ってくれた。
「ルレツィア、己を責めることはない。我々はお前を愛しているし、たとえどのようなことになろうともお前を責めはしない。いや、あまりに道を外れたことをしていたなら注意はするだろうが……そうでなければお前を悪く言うようなことはしないから、安心しろ」
父もそう言ってくれた。
私の能力ゆえに切り捨てられたことは辛く、ただ、両親が味方でいてくれたことはとても心強かった。
それからしばらくは体調が優れず。婚約破棄を受け入れはしたものの、時折急に切なくなって、時には涙が出ることもあった。母はいつも気にかけてくれていて、私の部屋にお菓子を持ってきてくれたり声をかけてくれたりした。それに支えられながらも、いまいちすっきりできない日々を生きていた。
以前のように魔法を使う気にはなれなかった。
そもそも魔法というものを思い出したくなかったのだ。
この力を人のために使える幸福――この時はそれすら感じられなくなっていた。
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