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3話「城へと」
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城へ連れていく――そんな言葉はすぐには真実だとは思えなかった。
けれどもその時は勢いに乗っている部分もあって。
だから、案外さらりと、うさぎのような生き物についていってみることを決意できた。
私は両親にそのことを話した。二人は戸惑いつつも私の望む道がそれならそれでもいいと言ってくれて。無事、理解してもらうことができた。それから私は少しだけ準備をし、うさぎのような生き物に準備完了を告げる。
「じゃ、行こうか!」
「お願いね」
うさぎのような生き物はアメジストみたいな瞳を輝かせ始める。
何が起きる?
これは魔法?
若干戸惑いながらも目の前の不思議な生き物をじっと見つめ続ける。
「いくよ――」
「は、はい!」
すべてが光に包まれる。目の前の不思議な生き物の瞳と同じ、アメジストのような色をした輝き。それはあっという間に私を包んでゆく。視界もその光の色に塗り潰されて。
そして、一旦何も見えなくなった。
だがすぐに視界が戻る。
ただ、その時には、私がいるのは自室ではなくなっていた。
「あれ……」
ここはどこだろう。あのうさぎのような生き物が言っていた、城、なのだろうか。見渡せば確かにそんな気もする。廊下の床、天井の絵、壁や扉の装飾。どことなく高級感がある。また、廊下の途中にある台には、高価そうな置き物も置いてあるのが見えた。
とはいえここへ来るのは初めて。
どこへ行けば良いのか分からない。
どうしよう、と困っていると――視界の端に紫の蝶が入り込んできた。
「あっ」
うさぎのような生き物の瞳と同じ色。私は無関係ではないと思って。ひらりひらり、ふわりふわり。気ままに飛ぶそれについていってみることにした。蝶が私を案内している、そんな気がしたのだ。
そしてたどり着いたのは一枚の扉の前だった。
紫の蝶に導かれここへ来た。
ここへ案内されたということは何かしら意味があるのだろうが、いきなり扉を開ける勇気はない。
開けてみるべき? 開けない方が良い? ――なんて思っていると。
がちゃ、と音を立て、扉がゆっくりと開いた。
扉を開けたのは青年だった。
私より少し年上だろうか、二十代後半くらいかそれより少し若いくらいに見える。あくまで見た感じからの推測だが。ただ、年齢はおいておくとしても、凛々しさのある魅力的な外見を持つ青年であった。
黒に近い色のショートヘア、さらさらで女性から見ても羨ましく思うほどの綺麗な髪質。目鼻立ちは整っており、やや掘りは深いが、凛々しさを感じさせてくれる。そして瞳は紫色。大きく目立つ眼球ではないものの潤んだような煌めきがあり、まるで宝玉であるかのよう。
「来てくれたんだね」
「え……」
凛々しい青年が話しかけてくる。
私は彼のことなんて知らない。
向こうは知っているのか、あるいは、怪しく思いながらも敢えてそういう話の振り方をしてみたのか。
「ルレツィアさんだよね」
「え、えっと……」
「分からない? 瞳を見て」
「瞳……ですか」
「見覚えがないかな? この色、この瞳」
もしかして……うさぎのような生き物!?
瞳の色が同じ。
そういうことか。
同一人物か。
「貴方は……まさか、あの、うさぎのような……?」
言うと、目の前の青年はいたずらっぽく笑う。
「そう! 分かってくれて嬉しいよ!」
凛とした面に浮かぶ子どもっぽい笑み。
少しずれがあるけれど。
それはそれで魅力がある、そんな風にも感じる。
「ということは、貴方が、私をここへ?」
「へへ、そういうこと!」
うさぎのような生き物もきちんとここへ来ていたのだと分かり、ほっとする。
「そうですか、なら良かった……安心しました……」
「取り敢えずこっちへ来ない?」
「ええと、そちらは」
「ぼくの部屋! ま、自室だね!」
「あ、そうなのですね」
「お茶とかお菓子とかあるよ」
「あ、はい、では……少しだけ失礼します」
その後私は知った。
彼はこの国の王子だったのだと。
私の家に来たうさぎのような生き物と今目の前にいる黒髪紫眼の青年が同一人物、それだけでも驚きなのだが、しかも彼が王の子だなんて――私、これからどうなってしまうのだろう!?
けれどもその時は勢いに乗っている部分もあって。
だから、案外さらりと、うさぎのような生き物についていってみることを決意できた。
私は両親にそのことを話した。二人は戸惑いつつも私の望む道がそれならそれでもいいと言ってくれて。無事、理解してもらうことができた。それから私は少しだけ準備をし、うさぎのような生き物に準備完了を告げる。
「じゃ、行こうか!」
「お願いね」
うさぎのような生き物はアメジストみたいな瞳を輝かせ始める。
何が起きる?
これは魔法?
若干戸惑いながらも目の前の不思議な生き物をじっと見つめ続ける。
「いくよ――」
「は、はい!」
すべてが光に包まれる。目の前の不思議な生き物の瞳と同じ、アメジストのような色をした輝き。それはあっという間に私を包んでゆく。視界もその光の色に塗り潰されて。
そして、一旦何も見えなくなった。
だがすぐに視界が戻る。
ただ、その時には、私がいるのは自室ではなくなっていた。
「あれ……」
ここはどこだろう。あのうさぎのような生き物が言っていた、城、なのだろうか。見渡せば確かにそんな気もする。廊下の床、天井の絵、壁や扉の装飾。どことなく高級感がある。また、廊下の途中にある台には、高価そうな置き物も置いてあるのが見えた。
とはいえここへ来るのは初めて。
どこへ行けば良いのか分からない。
どうしよう、と困っていると――視界の端に紫の蝶が入り込んできた。
「あっ」
うさぎのような生き物の瞳と同じ色。私は無関係ではないと思って。ひらりひらり、ふわりふわり。気ままに飛ぶそれについていってみることにした。蝶が私を案内している、そんな気がしたのだ。
そしてたどり着いたのは一枚の扉の前だった。
紫の蝶に導かれここへ来た。
ここへ案内されたということは何かしら意味があるのだろうが、いきなり扉を開ける勇気はない。
開けてみるべき? 開けない方が良い? ――なんて思っていると。
がちゃ、と音を立て、扉がゆっくりと開いた。
扉を開けたのは青年だった。
私より少し年上だろうか、二十代後半くらいかそれより少し若いくらいに見える。あくまで見た感じからの推測だが。ただ、年齢はおいておくとしても、凛々しさのある魅力的な外見を持つ青年であった。
黒に近い色のショートヘア、さらさらで女性から見ても羨ましく思うほどの綺麗な髪質。目鼻立ちは整っており、やや掘りは深いが、凛々しさを感じさせてくれる。そして瞳は紫色。大きく目立つ眼球ではないものの潤んだような煌めきがあり、まるで宝玉であるかのよう。
「来てくれたんだね」
「え……」
凛々しい青年が話しかけてくる。
私は彼のことなんて知らない。
向こうは知っているのか、あるいは、怪しく思いながらも敢えてそういう話の振り方をしてみたのか。
「ルレツィアさんだよね」
「え、えっと……」
「分からない? 瞳を見て」
「瞳……ですか」
「見覚えがないかな? この色、この瞳」
もしかして……うさぎのような生き物!?
瞳の色が同じ。
そういうことか。
同一人物か。
「貴方は……まさか、あの、うさぎのような……?」
言うと、目の前の青年はいたずらっぽく笑う。
「そう! 分かってくれて嬉しいよ!」
凛とした面に浮かぶ子どもっぽい笑み。
少しずれがあるけれど。
それはそれで魅力がある、そんな風にも感じる。
「ということは、貴方が、私をここへ?」
「へへ、そういうこと!」
うさぎのような生き物もきちんとここへ来ていたのだと分かり、ほっとする。
「そうですか、なら良かった……安心しました……」
「取り敢えずこっちへ来ない?」
「ええと、そちらは」
「ぼくの部屋! ま、自室だね!」
「あ、そうなのですね」
「お茶とかお菓子とかあるよ」
「あ、はい、では……少しだけ失礼します」
その後私は知った。
彼はこの国の王子だったのだと。
私の家に来たうさぎのような生き物と今目の前にいる黒髪紫眼の青年が同一人物、それだけでも驚きなのだが、しかも彼が王の子だなんて――私、これからどうなってしまうのだろう!?
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