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5話「人々のために力を使いたい」
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それからというもの、私は、魔法を使って人々の悩みを解決するべく動くという仕事を始めた。
私一人でできることは限られている。が、王子が背後にいるなら話は別だ。少なくとも、この国内においては、誰もいちゃもんはつけられない。王子が応援している、その事実があるのとないのとでは周囲の理解の仕方が大きく変わってくるのだ。
アルフレートとの出会いからしばらく経って私が城の近くで始めた『魔法で解決・お悩み相談所』は今日も賑わっている。
――否、基本予約制なので、賑わっている、という表現は少し変かもしれないが。
ただ、連日、救いを求めて人々はここへ来るのだ。
「娘の病がなかなか治らなくて……あぁ、このままでは、と思って……命を落とすのではないかと不安で不安で……」
今対応しているのは三十代くらいの女性。
娘がよく分からない病にかかり治らないそうだ。医師に診てもらうも原因は不明、どころか、何の病なのかさえはっきりしない状態だそう。それゆえどのような治療をすれば良いのかも分からず。素人の母親だけではどうしようもなく、ただ家で寝かせていることしかできないでいるそうだ。
「自然治癒力を高める魔法を使ってみても良いかもしれませんね」
魔力を持つ女魔法を使う女は、魔女、穢れた人間。
穢れた魔女。
かつてアドムからかけられた心ない言葉――今でも時折それらを追い出すことはあり、その際には心が暗雲で満ちる。
それでも目の前の人を救うために。
強い決意を忘れてはならない。
それを忘れてしまっては私は私でなくなってしまうようなものだ。
「そ、それは……? 高額、でしょうか……?」
「いえ」
娘を想う母親の気持ちは分からないではない。いや、もちろん、私にはまだ娘はいないのだが。ただ、それでも、母が子を大切に想う気持ちを想像することはできるのだ。己の腹から出てきた子、きっと愛おしいだろう。育児に心が折れそうになることはあっても、それでも、心の奥には深い子への愛があることだろう。
「お金なら! 多少はあります! 払える範囲のお金は渡しますので!」
「お金は最低限しか受け取らない形となっています」
「そ、そうですか……あ、あの! どうしても娘を助けたいのです! お願いです、助けてください!」
「はい。お受けします」
「ありがとうございます!」
「では娘さんをここへ連れてきてください」
「は、はい! 何とか連れてきます!」
一度帰宅し再びやって来た女性は娘を抱いていた。
十歳になるかどうかというような年齢に見える女の子だ。
女性は娘をソファに寝かす。私はその女の子の正面へ。ソファの高さに合うようにしゃがみ込み、右手をかざす。かざした手のひらから青緑の柔らかな光が放たれると、目を閉じて苦しそうにしていた女の子がゆっくりと目を開いた。
「あ、れ……ここ……ど、こ……」
「気がつきましたか?」
「おねえ、さん……? ね、え……? ママ、は……?」
「私の後ろにいます」
「わた、し、これ……どうなって……何、し、て……」
「病にかかっていたようです。災難でしたね。しかし安心してください、近く治ってくるはずですので」
女の子はまだ少し眠そうな目つきのままゆっくり微笑む。
「も、う……辛く、な、い……よ」
「良かった。もうしばらく続けますね」
「……ありがと、おねえさん」
そうしているうちに女の子はまた寝てしまった。
しかし今はもう苦しげではない。
すやすやと快適そうに穏やかに眠っている。
「助かりそう……でしょうか……?」
女の子の母親は恐る恐る尋ねてきた。
「はい、恐らく」
そう答えると。
「良かった……」
彼女は少し安心したように肩の力を抜いていた。
私一人でできることは限られている。が、王子が背後にいるなら話は別だ。少なくとも、この国内においては、誰もいちゃもんはつけられない。王子が応援している、その事実があるのとないのとでは周囲の理解の仕方が大きく変わってくるのだ。
アルフレートとの出会いからしばらく経って私が城の近くで始めた『魔法で解決・お悩み相談所』は今日も賑わっている。
――否、基本予約制なので、賑わっている、という表現は少し変かもしれないが。
ただ、連日、救いを求めて人々はここへ来るのだ。
「娘の病がなかなか治らなくて……あぁ、このままでは、と思って……命を落とすのではないかと不安で不安で……」
今対応しているのは三十代くらいの女性。
娘がよく分からない病にかかり治らないそうだ。医師に診てもらうも原因は不明、どころか、何の病なのかさえはっきりしない状態だそう。それゆえどのような治療をすれば良いのかも分からず。素人の母親だけではどうしようもなく、ただ家で寝かせていることしかできないでいるそうだ。
「自然治癒力を高める魔法を使ってみても良いかもしれませんね」
魔力を持つ女魔法を使う女は、魔女、穢れた人間。
穢れた魔女。
かつてアドムからかけられた心ない言葉――今でも時折それらを追い出すことはあり、その際には心が暗雲で満ちる。
それでも目の前の人を救うために。
強い決意を忘れてはならない。
それを忘れてしまっては私は私でなくなってしまうようなものだ。
「そ、それは……? 高額、でしょうか……?」
「いえ」
娘を想う母親の気持ちは分からないではない。いや、もちろん、私にはまだ娘はいないのだが。ただ、それでも、母が子を大切に想う気持ちを想像することはできるのだ。己の腹から出てきた子、きっと愛おしいだろう。育児に心が折れそうになることはあっても、それでも、心の奥には深い子への愛があることだろう。
「お金なら! 多少はあります! 払える範囲のお金は渡しますので!」
「お金は最低限しか受け取らない形となっています」
「そ、そうですか……あ、あの! どうしても娘を助けたいのです! お願いです、助けてください!」
「はい。お受けします」
「ありがとうございます!」
「では娘さんをここへ連れてきてください」
「は、はい! 何とか連れてきます!」
一度帰宅し再びやって来た女性は娘を抱いていた。
十歳になるかどうかというような年齢に見える女の子だ。
女性は娘をソファに寝かす。私はその女の子の正面へ。ソファの高さに合うようにしゃがみ込み、右手をかざす。かざした手のひらから青緑の柔らかな光が放たれると、目を閉じて苦しそうにしていた女の子がゆっくりと目を開いた。
「あ、れ……ここ……ど、こ……」
「気がつきましたか?」
「おねえ、さん……? ね、え……? ママ、は……?」
「私の後ろにいます」
「わた、し、これ……どうなって……何、し、て……」
「病にかかっていたようです。災難でしたね。しかし安心してください、近く治ってくるはずですので」
女の子はまだ少し眠そうな目つきのままゆっくり微笑む。
「も、う……辛く、な、い……よ」
「良かった。もうしばらく続けますね」
「……ありがと、おねえさん」
そうしているうちに女の子はまた寝てしまった。
しかし今はもう苦しげではない。
すやすやと快適そうに穏やかに眠っている。
「助かりそう……でしょうか……?」
女の子の母親は恐る恐る尋ねてきた。
「はい、恐らく」
そう答えると。
「良かった……」
彼女は少し安心したように肩の力を抜いていた。
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※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。
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