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前編

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 私には三つ年下の妹がいる。
 容姿性格共に地味であまり目立たない私とは対照的に、彼女は華やかな容姿と外面の良さという武器を手にしている人気者だ。
 彼女はとにかく可憐な乙女。
 長い睫毛に彩られた二重の目もとだけでも私とは大違いの華やかさだが、巻かれた艶やかな金髪やすべすべの肌もその魅力をより一層高めている。

 しかし彼女は私に対して心ない。

「お姉さま邪魔! そこ退いて!」
「え、あ……うん」
「このあたしの通り道を塞ぐなんて百年早いわ!」

 彼女はたびたび私に当たり散らしてくる。

 そういう時の彼女は大抵鬼のような顔をしていて。
 こんな場面を見たらきっと皆驚くだろうな、なんて思ったりもする。

 そんなある日、私のもとへ婚約話が舞い込んできたのだが。

「お姉さまが婚約? まっさかぁ、地雷案件じゃないの?」
「それは……まぁ、分からないけれど……」
「あっははは! 貴女みたいな人にまともな婚約希望が入ってくるわけないでしょ! どーせくっだらないやつよ、お姉さまに近づいてくるのは」

 妹には既に婚約者がいる。
 タオルを製造販売している中規模会社の社長の息子だ。

「ま、でも、こんな機会二度とないかもしれないしぃ? 受けておいたら? 婚約希望。くだらない相手でも一生独りよりはましでしょ」

 そんなことを言い勝ち誇ったような顔をしていた妹だったが。

「な……お、王子……!? 何よそれ! どういうことよ!?」

 私への婚約希望を出してきた人がある国の王子であると判明すると青ざめた。
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