婚約破棄後、帰り道。~これまで気づいていなかったことに気づけました~

四季

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婚約破棄後、帰り道。~これまで気づいていなかったことに気づけました~

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「お前とはこれ以上無理だ! 地味だから! よって、婚約は破棄とする!」

 告げられたのは、どうしようもない終わりを告げる言葉であった。

 そう、それは終焉。
 まさにそれで。
 それ以上でもそれ以下でもない、ただ想定外なことではあって。

「はぁ……、これからどうしよう……」

 それだけに落ち込んでしまった。

 帰り道、雨上がりの道を一人歩く。
 まだ水の匂いが残っている。
 辺りには人はいない、ここにあるのは土と水の匂いだけ。

 でも、ふと木へと目をやれば、葉について輝く水の粒が見えて。その煌めきに特別な魅力を感じる。それは生たる水の魅力。日頃は目を向けなかったし気づきもしなかった不思議な自然の優しさに、今は気づくことができた。

 悲しいからこそ。
 傷ついたからこそ。

 いつもとは違う何かに気づけたのだ。

 ――自然はいつもここにある。

 木や葉や雨の粒が励ましてくれているかのように感じられた。

 そう、彼らはいつも見守ってくれている。嬉しい時も、苦しい時も、辛い時だって。どんなに孤独でも、自然と呼ばれるそれらだけはそっと寄り添ってくれているのだ。声は発さずとも、である。

(まぁいいや、またここから歩き出そう)

 少し、前向きになれる――そんな気がした。


◆終わり◆
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