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後編
しおりを挟む「もう少ししたら、失礼しますね」
「えっ。もう帰られるのですか? 大丈夫です?」
「あ、はい。いつまでも居座るわけにはいきませんので。早めに失礼させていただこうかと思っております」
カオスともこれでお別れか。
そう思うと何となく寂しさもあった。
不思議なことね、出会ったばかりだというのに。
……婚約破棄された後だから、だろうか?
「お世話になりました、ありがとうございました」
「力になれて良かったです」
こうしてカオスと別れる。
もうきっと会うことはないだろう、なんて思っていたのだが。
「昨日はお世話になりました!」
翌日の昼前、彼はまた私の前に現れた。
しかもその手には大量の金塊が握られている。
「お礼です! こちら! 細やかですが……受け取ってください!」
「え、いや、これって金塊じゃ……?」
「はい!」
「えええ! 受け取れませんよそんなの、無理です、高級品過ぎます」
「そうですか? べつにそこまでのものでは……ないですよね? 普通の金塊ですし。遠慮は不要ですよ?」
カオスの価値観はどことなくずれている、そんな気がする。
その後私はカオスから様々な貢物を貰うこととなり、それと同時にどんどん裕福になっていった。
そして――。
「貴女と生涯を共にしたいです」
やがてカオスからそんな想いを告げられることとなり。
「私も、同じ気持ちでいます」
私は彼の申し出を受け入れることにした。
だって私、彼のことをもう好きになっているんだもの。
「カオスさん、あなたとならきっと――上手くやっていける、生きてゆける、そんな気がするのです」
「僕もですよ」
「ふふ。同じ、ですね」
「はい。まさに。同じ気持ちでいるような、そんな感じですね」
こうして私はカオスと結ばれ幸せを掴んだ。
一方フルフレッドはというと、あの後色々やらかしてしまったために社会的地位を失ったうえ誰からも相手にされないような状況に追い込まれてしまったそうで、今は心を病み自宅に引きこもる生活をしているそうだ。また、両親との関係も日に日に悪化していっているそうで、今では毎日のように親子間で喧嘩が勃発しているような状態だとも聞いている。
彼はもう別人のようになってしまった。
私が知る彼はこの世界から完全に消えたのである。
◆終わり◆
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