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前編

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 私は生まれつき魔法使いだった。
 けれどもその力を悪用したことはなかったし何なら良いように使ってきたことの方が多かったと思う。
 だがそれで受け入れてもらえたかというとそうでもなくて。
 理不尽だし悲しいことだけれど、どちらかというと嫌われているようなことも少なくはなかった。

 やはり、どうしても、魔法を使えない人からすると魔法を使える人は不愉快な存在のようなのだ。

 そして、それは、婚約者である一歳年上の青年ヴェルグも同じ。

 彼は魔法を使えない側の人間で。
 魔法を使える者を良く思っていない人間であった。

「リリス、やはり、どう頑張ってもお前を受け入れはできない」
「ヴェルグさん……」
「魔女を家に入れる、そのことを、どうしても受け入れることができないのだ」

 ヴェルグも少しは努力はしたようだが、それでも、私を理解することは少しもできないようで。

「よって、婚約は破棄とする」

 その日、彼は、迷いのない瞳でそう宣言した。

 私は一応説得してみようとはした。
 けれども無駄。
 彼の耳は固く閉ざされてしまっていたのだ。
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