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前編
しおりを挟む「お前なんてなぁ、はげみたいなもんなんだよ!」
婚約者ミロストフは荒々しく私を貶めるような言葉を発する。
「だからもうお前に存在価値はねぇ! よって、婚約は破棄とする!」
その時の彼はかっとなっていて。
それゆえ他者への思いやりなんてものは一切なかった。
「ご奉仕しねぇのならお前なんざ持ってても価値なしなんだよ! 分かったか? はげ野郎。いいな? 理解したのなら心の中で土下座しながらとっとと去っていけや!」
彼はあまりにも酷かった。
そもそも、他人に『はげ』なんていう言葉をかけるなんてどうかしている。
しかも、そんな言葉を侮辱に使うこと自体、正直良いこととは言えない。それも外見に関する単語を使って他人を悪く言って傷つけようとするなんて、特に悪質だ。
「分かりました、去ります」
私はもうミロストフとはやっていけない。
強くそう感じた。
なので私は彼の前からさっさと立ち去ろうと思った。
「さようなら」
縋りつくようなことなんてしない。
彼が理不尽に切り捨ててくるのであれば、私だって放り捨ててやる。
私は奴隷ではないのよ! という感じだ。
◆
婚約破棄の数日後、ミロストフが亡くなったという話を聞いた。
その日大量の巨大さぼてんを運んでいた馬車がミロストフの家の前で転び、その際に積んでいたさぼてんが付近に飛び散って、それの棘がたまたま家の前にいたミロストフの身体に突き刺さったそうで。
それによってミロストフはこの世を去ることとなってしまったそうだ。
そのさぼてんは特殊な種類のものだったらしく、棘がとんでもなく硬くて大きいものだったのだそうだ。
だからこそ人を殺すほどの威力があったのだろう。
この世にそんなに立派な棘を持ったさぼてんがあるなんて知らなかった。
やはりまだこの世界には私の知らない物がたくさんあるのだ、改めてそう思った。
それにしても怖いなぁ、さぼてん……。
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