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それなりに資産のある家に生まれた一人娘の私、リーネリア・フリューゲルには、幼い頃から決まっていた婚約者がいた。
その婚約者というのは、母親の友人の息子。名は、ダイス・カインという。彼は、年頃の娘でも勝てないような良質な金髪を生まれながらにして持っている。そして、顔立ちも整っていて、女性人気が高くなりそうな目鼻立ち。背筋をぴんと伸ばしていると、童話に出てくる王子様のようだ。
だが、彼が王子様のような男性だからこそ、私は困ってきた。
まず彼は婚約者がいるということの意味をよく分かっていない。そのため、私という婚約者がいるにもかかわらず、異性と二人で会ったり夜遅くまで食事をしたりと危機感がない。いや、むしろ、自分に惚れている異性と遊ぶことを楽しんでいるのだ。
ダイスに近づく娘は、大抵、彼の隣に立つことを夢みている。
けれどもダイス自身はそれに気づいていない。
そんな状態だから、ことあるごとにややこしいことに巻き込まれてしまうのだ。
これまで私はよく厄介事に巻き込まれてきた。それは、私がダイスの婚約者だから。ダイスに憧れる女性から悪口を言われたり嫌がらせをされたりするのは、もはやちっとも驚かないくらいよくあることである。酷い時には、路上で刃物を持った女性に襲われたこともあった。
「リーネリアさん、わたしのお腹の中には新しい生命が宿っているのですよ」
「……はい?」
何の前触れもなく訪問してきた赤茶の髪を持つ女性は、自身が妊娠していることを突然宣言してきた。
「あなたはダイス・カイン様の婚約者なのですよね」
「はい」
「けれども、子を宿してはいないのでしょう?」
「はぁ……それは、そうですね。まだ結婚していませんので」
私とダイスは、婚約者同士ではあるが、夫婦ではない。
正式に夫婦になる前から子を宿す、というのは、そんなによくあることではないと思うのだが。
その婚約者というのは、母親の友人の息子。名は、ダイス・カインという。彼は、年頃の娘でも勝てないような良質な金髪を生まれながらにして持っている。そして、顔立ちも整っていて、女性人気が高くなりそうな目鼻立ち。背筋をぴんと伸ばしていると、童話に出てくる王子様のようだ。
だが、彼が王子様のような男性だからこそ、私は困ってきた。
まず彼は婚約者がいるということの意味をよく分かっていない。そのため、私という婚約者がいるにもかかわらず、異性と二人で会ったり夜遅くまで食事をしたりと危機感がない。いや、むしろ、自分に惚れている異性と遊ぶことを楽しんでいるのだ。
ダイスに近づく娘は、大抵、彼の隣に立つことを夢みている。
けれどもダイス自身はそれに気づいていない。
そんな状態だから、ことあるごとにややこしいことに巻き込まれてしまうのだ。
これまで私はよく厄介事に巻き込まれてきた。それは、私がダイスの婚約者だから。ダイスに憧れる女性から悪口を言われたり嫌がらせをされたりするのは、もはやちっとも驚かないくらいよくあることである。酷い時には、路上で刃物を持った女性に襲われたこともあった。
「リーネリアさん、わたしのお腹の中には新しい生命が宿っているのですよ」
「……はい?」
何の前触れもなく訪問してきた赤茶の髪を持つ女性は、自身が妊娠していることを突然宣言してきた。
「あなたはダイス・カイン様の婚約者なのですよね」
「はい」
「けれども、子を宿してはいないのでしょう?」
「はぁ……それは、そうですね。まだ結婚していませんので」
私とダイスは、婚約者同士ではあるが、夫婦ではない。
正式に夫婦になる前から子を宿す、というのは、そんなによくあることではないと思うのだが。
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