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婚約破棄されましたけれど、彼はわたくしの目の前で死に至りましたわ。
しおりを挟む「エンデーリカ、お前、何となく顔がむかつく」
我が婚約者ウィッツはある日突然そんな失礼なことを言ってきましたわ。
何の前触れもなかったので驚きでした。
まさか急にそのようなことを言われてしまうなんて、と。
けれどもウィッツの無礼なそこで終わりではありませんでした。
「だから婚約破棄する」
彼はそこまで言ったのです。
婚約破棄、その重みを理解していらっしゃるのかしら?
それは他者の人生を大きく変える決定。
それゆえ、本当は、そんな軽く言って許されることではないのです。
けれど彼はさらりと言ってのけるのですから……大丈夫なのかしら?
「婚約破棄、とは。本気で仰っていますの」
「当たり前だろ」
「人生における重大なことですわ。きちんと説明していただかなくては困ります」
「何だよ、うぜぇな」
あらま、まるで反抗期。
「そういう問題ではないでしょう」
「うぜえ! くそ女はさっさと消えろ!」
――刹那、空からそら豆の形をした謎物体が飛んできまして。
「え」
それは目の前に落下。
ちょうどそこに立っていたウィッツを潰してしまいましたの。
「あら……なんということ。亡くなられてしまいましたわ……」
こうして、ウィッツはわたくしの目の前で死に至ったのでした。
◆
あれから数年、わたくしは良縁に恵まれ、今は貴族の妻として夫を支えながら愛し合って生きていますわ。
ウィッツのこと? もうどうでもいいですわ。
だって過去のことではありませんの。
彼はもう亡くなられたのですし、今さら彼に何か言うつもりだってありません。
それよりも、わたくしは今の幸福を大事にしていたいんですの。
◆終わり◆
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