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婚約破棄されましたが私はのんびり生きていきます。さようなら、あなた。

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「本日をもって君との婚約は破棄とする」

 婚約者ヴェルーリーズは冷ややかな表情で宣言した。

 その時の私には驚きしかなかった。
 なぜ今なのか、どうしてそんなこと、疑問ばかり。

 でも尋ねることはできなくて。

「……そうですか。分かりました、では……さようなら」

 そう言って彼の前から去ることしかできなかった。


 ◆


 ヴェルーリーズとの婚約の破棄から今日で十年。
 私は今、王子の妻として、この世界に生きている。

 王子の妻となればいずれこの国の中心部に関わる身。学ばなくてはならないことがたくさんある。が、そんな勉強くらい苦痛でもなんでもない。王子の妻であるため学び続けるのは義務だ、学ぶことをやめてはならない。

 そういえば、先日噂として聞いたのだが。

 ヴェルーリーズは私との婚約を破棄した直後に密かに恋人のような関係になっていた女性と婚約し、そのまま結婚したそうだ。
 だが、結婚して正式に夫婦となったその日に、女性の父親に多額の借金があることが発覚。
 幸せの絶頂にいるはずだった二人は奈落の底まで叩き落とされてしまった。

 その後は夫婦喧嘩が絶えず、最終的には離婚になったらしい。


◆終わり◆
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