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「君とはおしまいにすることにしたんだい、だって君俺の好みとずれてるし」何ですかそれ!? 滅茶苦茶じゃないですか!?
しおりを挟む夜空を見上げる。
地表から背筋を伸ばしているすすきたちがふわりふわりと左右に柔らかく揺れている。すすき自体が柔らかな質感だから柔らかな揺れ方に見えるだけかもしれないが。ただ、動き自体にも柔らかさはあるような気がするので、その両方から受ける印象というのが答えかもしれない。
昨日、婚約破棄された。
その瞬間は突然やって来た。
彼は急に私を呼び出してきて「君とはおしまいにすることにしたんだい、だって君俺の好みとずれてるし」とか言ってきて。
それによって私は一方的に捨てられることとなってしまった。
こんな夜には月とすすきが心にしみわたる。
ありふれた風景、自然の姿、それらが驚きと共に傷ついた心にしっとりと寄り添ってくれるのだ。
自然がこんなにも愛おしいものだなんて、ずっと知らなかった……。
私は一つ失った。
婚約者という存在を。
でも、それによって得たものもあったのかもしれない。
それは澄み渡る感性。
清らかな水のような些細なことから大きな癒しを感じ取る力を手に入れた。
そうか、私は失っただけではなかったのか。
そのことに気づいた時、心がふわっと軽くなるのを感じた。
◆
あれから数年、私は稲の研究をしている男性と結婚し良き家庭を築くことに成功した。
彼はまったりした人だ。
たまに抜けているところもあるけれどそこもまた良い点。
私は彼のことを愛している。
ちなみに、元婚約者の彼はあの後地雷女に引っかかってしまい朝から晩まで見張られてしまうような息苦しい生活をさせられることとなってしまったようだ。
……ま、ざまぁみろである。
◆終わり◆
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