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前編

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 王家に生まれたエリーザはまだ幼い頃に城の前に捨てられた。

 それは、彼女に魔法を使える証明である紋章があったからだ。

 国においてその紋章は汚らわしいものとされていて。そのため、王の子にそれがあるなどということを明かすわけにはいかず、捨てられることとなったのである。

 そんな悲劇のヒロインとも言えるようなエリーザだったが――彼女は生まれた国ではない国にて今とても幸せに暮らしている。

「エリーザ、明日結婚式だな!」
「ええ」

 捨てられた赤子であったエリーザは妖精の国フォフィファの国王に拾われた。そして国王のもとで大事にされて育って。そして今に至っている。

 エリーザは赤子の頃のことをあまり覚えておらず、また、実の親に捨てられたらしいということは知ってはいるもののちっとも気にしていない。

「準備はもう終わったのか?」
「もちろんよ父さん。相変わらず心配性ね」
「ああ心配だ。だって可愛い可愛い娘の特別な日のことだからな」

 フォフィファへ来てからもエリーザの人生には様々な苦労があった。

 妖精族でないからと婚約破棄されたこともあったり。
 差別に近いようなことをされることや裏でそういったことを言われることもあって。

 それでも彼女は前向きに歩いてきた。

「……ありがとう、父さん」
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