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魔法剣士グラノール
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僕とサーシャ様はレト大陸の西の端にある小さな集落へと、やって参りました。
この集落は山間で、ひっそりと暮らす民俗、通称「ラビット」と呼ばれる人々が住んでいます。
ちょっと変わった彼らの住む、この集落は一般には知られていません。僕には、たまたまラビットに知人が居たので迷うことなく、やってこれましたが、皆さんはどうか決して探さないでくたさいね。
深い森に食われてしまいますから。
「これは凄いな。まるで妖精でも出てきそうな村ね。」
珍しくサーシャ様が感心していると、早速のお出ましです。
「誰が妖精だって?この小娘。」
「うわっ!出た妖怪!」
「妖怪じゃないわ!まったく――おっ!もしかしてピートちゃん!?」
「ピ、ピートちゃん!?」
何年振りに、ちゃん付けで呼ばれたでしょうか。何年経っても、相も変わらずです。
「お久し振りです、グラノールさん。」
「お久し振り――じゃないわよ!手紙一つ寄越さないで。てっきり死んだかと思ったじゃないのよ。」
「すいません。僕も何かと忙しくて。あっ、こちらサーシャ様です。僕は今、この方の従者をしているんですよ。」
グラノールさんは訝しげにサーシャ様を舐め回す様に眺めた。
「ふーん。やっぱり、あんた少し変わってるね。どうして、こんなガキのお守りなんかやってんだい。」
確かに僕は変わり者なのかもしれません。最近になって、それを自覚し始めたところです。
「ガキって……あなたの方がよっぽどガキじゃないか!」
サーシャ様の、お怒りはごもっともです。なんせグラノールさんは見た目、まだ年端のいかない子供なのですから。
しかし、驚いてはいけません。こう見えて彼女は百を悠に超えた婆さん……女性なのです。
それを知ったサーシャ様は絶対に信用しようとはしませんでしたがね。でも、事実なので仕方ありません。
「それで――何の用なんだいピートちゃん。」
僕は単刀直入にお願いしてみることにしました。
「サーシャ様に魔法剣をお教えして頂けないかと、思いまして。」
「――ない。というより嫌だ。」
グラノールさんの返答は恐ろしく早いものでした。
だが、考えは直ぐに変わることになります。
「ん?あんた、その目は……まさか!?」
「生まれつきだが。それが?」
「炎と氷の瞳――パープルアイズだね。これはレアな物を見せてもらったよ。よかったら、その二つの瞳をくれない?」
ああ……始まってしまいました。グラノールさんは研究対象を見つけてしまうと、どんな残酷なことも平気で口にしてしまいます。悪意はありませんよ。ただ好奇心が旺盛なだけです。
「じ、冗談じゃないよ。ピート、こいつ変だぞ。もう帰ろう。」
「あら、残念。まっ、ピートちゃんの頼みなら願いを聞いてあげてもいいけど。それに、その瞳は興味深いしね。教えてあげるわ魔法剣。」
狙い通りです。サーシャ様の特異体質に興味を示さない筈がない。最初から僕の目論見通りに事が運ばれてきました。
だが、問題はここからです。果たしてサーシャ様が本当に魔法剣を修得できるのか?という最大の難関が待ち受けているのです。
「それで、魔法についてどれくらい知っているの、サーシャ?」
これは予想もしていなかった質問です。あのサーシャ様が、答えられるはずがない。
「魔法……便利。」
「……馬鹿なの。ねえ、ピートちゃん。この娘、馬鹿なの!?」
はい、そうです。とは口に出せません。ここは、何とかグラノールさんに頑張ってもらわないことには、先に進めません。
「もういいわ。これから魔法について、私の家で座学会を開くから、ピートちゃんも参加して。」
「えー!私は実戦向きなんだけどな。」
「ごちゃごちゃ言わない。私を師匠にしたいなら、黙って従いなさい。」
こうして僕たちは、グラノールさんの家へと渋々向かうことになったのでした。
ちなみに、このグラノールさんは魔法剣の祖であるアリーシアの弟子であり、近年最強の天才魔法剣士と唄われたフォンダンの師匠であります。
残念ながらフォンダンは最近、魔物との戦いに敗れて、この世を去ってしまいました。
しかし、魔法剣士の始まりが女性というのには僕も最初は驚きました。
元々、腕力では男性に劣る女性の閃きというか、工夫ですね。
アリーシアは素晴らしい数々の功績を挙げて現役を退き、弟子であるグラノールさんを、ここラビットで育て上げました。
一説によると、グラノールさんは師匠のアリーシアよりも優れた魔法剣士なんだそうです。そんな方に教えていただくサーシャ様は幸せ者ですね。
当然、その手柄は僕の人脈があってこそですがね。
しかし当の本人であるサーシャ様はきっと、こんな素晴らしい出来事でさえ、夏の通り雨にくらいしか思っていないでしょう。
きっと、そうやって生きてこられた。不憫な方なのです。
「ピートちゃん!早く来なさい!」
おっと、僕はもう行かなければなりません。それでは皆様また次回。
この集落は山間で、ひっそりと暮らす民俗、通称「ラビット」と呼ばれる人々が住んでいます。
ちょっと変わった彼らの住む、この集落は一般には知られていません。僕には、たまたまラビットに知人が居たので迷うことなく、やってこれましたが、皆さんはどうか決して探さないでくたさいね。
深い森に食われてしまいますから。
「これは凄いな。まるで妖精でも出てきそうな村ね。」
珍しくサーシャ様が感心していると、早速のお出ましです。
「誰が妖精だって?この小娘。」
「うわっ!出た妖怪!」
「妖怪じゃないわ!まったく――おっ!もしかしてピートちゃん!?」
「ピ、ピートちゃん!?」
何年振りに、ちゃん付けで呼ばれたでしょうか。何年経っても、相も変わらずです。
「お久し振りです、グラノールさん。」
「お久し振り――じゃないわよ!手紙一つ寄越さないで。てっきり死んだかと思ったじゃないのよ。」
「すいません。僕も何かと忙しくて。あっ、こちらサーシャ様です。僕は今、この方の従者をしているんですよ。」
グラノールさんは訝しげにサーシャ様を舐め回す様に眺めた。
「ふーん。やっぱり、あんた少し変わってるね。どうして、こんなガキのお守りなんかやってんだい。」
確かに僕は変わり者なのかもしれません。最近になって、それを自覚し始めたところです。
「ガキって……あなたの方がよっぽどガキじゃないか!」
サーシャ様の、お怒りはごもっともです。なんせグラノールさんは見た目、まだ年端のいかない子供なのですから。
しかし、驚いてはいけません。こう見えて彼女は百を悠に超えた婆さん……女性なのです。
それを知ったサーシャ様は絶対に信用しようとはしませんでしたがね。でも、事実なので仕方ありません。
「それで――何の用なんだいピートちゃん。」
僕は単刀直入にお願いしてみることにしました。
「サーシャ様に魔法剣をお教えして頂けないかと、思いまして。」
「――ない。というより嫌だ。」
グラノールさんの返答は恐ろしく早いものでした。
だが、考えは直ぐに変わることになります。
「ん?あんた、その目は……まさか!?」
「生まれつきだが。それが?」
「炎と氷の瞳――パープルアイズだね。これはレアな物を見せてもらったよ。よかったら、その二つの瞳をくれない?」
ああ……始まってしまいました。グラノールさんは研究対象を見つけてしまうと、どんな残酷なことも平気で口にしてしまいます。悪意はありませんよ。ただ好奇心が旺盛なだけです。
「じ、冗談じゃないよ。ピート、こいつ変だぞ。もう帰ろう。」
「あら、残念。まっ、ピートちゃんの頼みなら願いを聞いてあげてもいいけど。それに、その瞳は興味深いしね。教えてあげるわ魔法剣。」
狙い通りです。サーシャ様の特異体質に興味を示さない筈がない。最初から僕の目論見通りに事が運ばれてきました。
だが、問題はここからです。果たしてサーシャ様が本当に魔法剣を修得できるのか?という最大の難関が待ち受けているのです。
「それで、魔法についてどれくらい知っているの、サーシャ?」
これは予想もしていなかった質問です。あのサーシャ様が、答えられるはずがない。
「魔法……便利。」
「……馬鹿なの。ねえ、ピートちゃん。この娘、馬鹿なの!?」
はい、そうです。とは口に出せません。ここは、何とかグラノールさんに頑張ってもらわないことには、先に進めません。
「もういいわ。これから魔法について、私の家で座学会を開くから、ピートちゃんも参加して。」
「えー!私は実戦向きなんだけどな。」
「ごちゃごちゃ言わない。私を師匠にしたいなら、黙って従いなさい。」
こうして僕たちは、グラノールさんの家へと渋々向かうことになったのでした。
ちなみに、このグラノールさんは魔法剣の祖であるアリーシアの弟子であり、近年最強の天才魔法剣士と唄われたフォンダンの師匠であります。
残念ながらフォンダンは最近、魔物との戦いに敗れて、この世を去ってしまいました。
しかし、魔法剣士の始まりが女性というのには僕も最初は驚きました。
元々、腕力では男性に劣る女性の閃きというか、工夫ですね。
アリーシアは素晴らしい数々の功績を挙げて現役を退き、弟子であるグラノールさんを、ここラビットで育て上げました。
一説によると、グラノールさんは師匠のアリーシアよりも優れた魔法剣士なんだそうです。そんな方に教えていただくサーシャ様は幸せ者ですね。
当然、その手柄は僕の人脈があってこそですがね。
しかし当の本人であるサーシャ様はきっと、こんな素晴らしい出来事でさえ、夏の通り雨にくらいしか思っていないでしょう。
きっと、そうやって生きてこられた。不憫な方なのです。
「ピートちゃん!早く来なさい!」
おっと、僕はもう行かなければなりません。それでは皆様また次回。
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