最強の女戦士ここにあり

田仲真尋

文字の大きさ
25 / 132

accept pupils~下編~

しおりを挟む
彼こと、ペンカタ……いや、僕の弟子の話です。

僕たちは寝食を共にし、固い絆で結ばれていきました。


「さあ、それじゃあそろそろ夕飯にしようか。食事の用意を頼むよ。」


「……。」


僕と彼が師弟関係になって、およそ三ヶ月。確か師匠は僕だったはずです。

しかし彼は僕の言うことを全く聞いてくれません。

どうしたものでしょうか。反抗期なのでしょうか。これだから子供は扱いにくい。


「仕方ない。食事は僕が用意しよう。その代わり君は剣の素振りを千回ですよ。」


「……。」


雑用等は全くやってくれない彼ですけど剣の修業だけは、きっちりやってくれます。

僕と出会った時よりも、かなり強くなっている様に思います。

一度テストしてみるのもいいですね。



――さらに三ヶ月後。


「今日は君に課題を与えよう。」


「……。」


僕らはキリエス国の王都マビン・グラスにいました。

僕はキリエスに目をつけられているので、なかなか危険な状況下にあります。

そうまでして人目につきやすい王都までやって来たのには理由があります。

ここ最近、巷の噂になっている「赤い刃レッドエッジ」を見つける為です。

世間では黒い刃と赤い刃では、どちらが強いのかという話題がトレンドらしいのです。

聞いた話によると赤い刃こと、ゲティという男はキリエスに雇われた傭兵らしい。そして彼が請け負った任は僕の首を取ること。

上等です。僕の通り名をパクったような輩に打ち取られるな男では、ありませんよ僕は。

だいたい赤い刃なんて血糊のついた剣の事を指しているだけで、刀身が赤い訳でもなんでもないんですよ。本当に腹立たしい。


話が逸れましたが、その赤い刃を見つけ出すことが僕の弟子の使命です。

戦わせないのかって?

さすがにそれは無理ではないでしょうか。

紛いなりにも、この僕と比べられるくらいだから、そこそこ強いのでしょう。彼にはまだ早いでしょう。

しかし赤い刃は単独で動いているわけではないようです。

どうやら剣各集団を率いているらしいのです。

つまり、他の雑魚の相手をさせようということです。

それくらいなら今の彼に丁度良いでしょう。


僕は街の片隅の路地で座り込んで赤い刃を捜しに行った弟子の帰りを待ちます。

奴を見つけたら僕に報告するように言いつけています。

単なる人捜しと思って舐めてはいけませんよ。

街の人々の話に聞き耳を立てて情報を収集しターゲットに辿り着く。これも生きていくためには、とても重要なことです。

僕は彼に剣術だけを教えるつもりは毛頭ありません。

一人で生きていく術を身に付けて欲しいのです。

僕って立派でしょ。


「遅いな。見つけられないのかな。」


まあ、この広い王都では簡単には見つからないのでしょう。

それも仕方ありませんね。


「おい!大変だ!赤い刃が誰かと決闘しているってよ!」


「赤い刃!?あんな凶暴な奴らと誰が戦っているんだ!?」


「それが――ガキらしいぜ。」


「ガキ?そりゃあ戦っているんじゃなくて一方的にやられてるんだろ。」


「とりあえず見に行ってみようぜ。ステン通りだ。」


街の住人達の話から察するに……彼だ!

捕まってしまったのだろうか?

もし本当に彼が、しくじってしまったのであれば期待外れですね。

もう少し出来る少年だと信じていましたから。

まあ、何はともあれ行ってみますか。どんな形であれターゲットは見つかったのですから。


僕が現場に辿り着くと、そこには大勢の人だかりができていました。

僕は、その人込みを掻き分けて前線へ。


「――!!こ、これは!?」

僕の目に飛び込んできた光景に絶句しました。

皆の視線の中央に刃から真っ赤な血が滴っている、それはまさに赤い刃。しかし、その剣を持っているのはゲティではなく、紛れもなく僕の弟子でした。

地べたに転がる数人の遺体の中にはゲティと思しき人物も。


「君がやったのか?」


彼は笑顔で頷きました。

その瞬間、僕の全身は粟立ち、心の奥底からマグマの様に熱い何かが噴き出しました。



僕たちは、その場を離れました。そして、人気のない森へ入りました。

僕は何度か躊躇いながらも彼に言いました。


「僕と本気で戦ってみないか。いや、戦おう。」


僕には、はっきりと分かっていました。彼が、僕の願いに応じることを。

そして地面に剣で少年は字を書き始めました。


「いいよ。でも、ぼくのほうが強いよ。」


僕の中で何かが弾けました。


「面白い。こい!」



――結果は僕の惨敗でした。

唯一、彼に感謝したいのは命まで取らないでいてくれたことです。

僕は、まだ死にたくありませんからね。


その夜、彼は僕の元から旅立っていきました。

僕は、剣を置くことを決心しました。

きっと僕では一生彼には勝てないでしょう。

まったく恐ろしい化け物を弟子にしてしまいました。

しかし、僕は諦めが悪い男です。いつの日か、どんな形であれ君を倒してみせます。

それまで、どんどん強くなって待っていてください。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます

天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。 王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。 影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。 私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...