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卒業
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このラビット族の集落は年間を通して非常に過ごしやすい気候を保っています。年中、春のようです。
僕はすっかりここが気に入りました。
毎日が昼寝日和なのですよ。最高です。
サーシャ様とローラスはグラノールさんの厳しい特訓に一年間耐え抜きました。
「燃え盛れ、フレイムソード!」
「氷剣アイスピック!」
お見事です。まさかサーシャ様が、ここまで魔法剣を使えるようになるなんて思ってもみませんでした。
ローラスなんかは、どうでもよいのですが、あの我慢のきかないサーシャ様が、一年もの間よく辛抱したと思います。
涙がでてきそうですよ、本当に。
「いいわ。二人とも合格よ。」
サーシャ様とローラスは顔を見合わせ笑みをこぼしました。
何かイラッとしますね。
きつい修行に耐えた者同士ですから仕方ありませんがね。
「やった。これでようやく次のステップにいけるのね。もう、この一年フレイムソードばかりやらされてたから死ぬかと思っちゃった。」
「それは俺も同じだ。くる日もくる日もアイスピックばかり。夢にまで出てきたんだぜ。」
「それで師匠、次は何をやるんですか?」
サーシャ様の言葉にグラノールさんは驚くような素振りを見せました。
そして、
「次って?これで終わりよ。あなたたちは無事に卒業よ。おめでとう。」と、言いました。
「ち、ちょっと待っていてください。まだフレイムソードしか使えないですよ、私。」
「俺だってようやく二つ目のの魔法剣アイスピックを習得しただけですよ。もっとこう、色んなバリエーションを教えてもらわないと。魔法剣士はバリエーションの多さが売りなんですから。」
これには僕も少し驚きました。
確かに二人とも一端の魔法剣士レベルには到達したでしょう。
しかしながら、まだまだやることは山のようにある様に思えます。
本当に、これでグラノールさんの修行は終わりなのでしょうか?
「二人とも卒業よ。魔法剣士としての基礎はできたわ。あとは実戦あるのみよ。いいこと、魔法剣の可能性は無限よ。創造力を高めなさい。そうしてそれを具現化するの。それを幾度も繰り返して魔法剣士としての力をつけるのよ。」
サーシャ様もローラスも、いまいち理解できないでいる様子でした。
もちろん僕にも、さっぱり分かりません。
「仕方ないわね、例えを見せてあげるわ。ここに刃折れの剣があるわ。よく見てなさい――レイブレイド!」
ぽっきりと折れた剣の先から光の刃が伸びてきました。
「おお!」
「おお!」
サーシャ様とローラスは目が点になって驚いていました。
「普通の剣士ならば戦いの最中に刃が折れてしまっては、もうお手上げよね。でも魔法剣士ならば、この通り。まだまだ戦えるわ。なんなら、その辺に落ちている木の枝だって武器になる。もちろん耐久性がないから実戦では使えないけど、いざとなれば身の回りにある物全てが使える魔法剣士は窮地に陥っても工夫次第では降参なんてことにはならないのよ。」
グラノールさんの言っていることはもっともです。
その知恵をつけるためには実戦を積み重ねていくより他ありません。
なにはともあれ、ひとまずはお疲れさまでした、ですね。
「さあ、今日は奮発して、お肉祭りよ。」
その夜、僕たちはグラノールさんの自慢の料理を囲みディナーを楽しみました。
「二人共、よく私の修行に耐えたわね。」
サーシャ様とローラスは嬉しそうに頷きました。
「最後に私から総括して助言するわ。」
二人は緩んだ顔を引き締めてグラノールさんの言葉を待ちました。
「まず、ローラスちゃん。さんざん小言を言ってきたけど、貴方は、きっと優れた魔法剣士になるでしょう。近年においては魔法剣士になりたいという人がめっきり減っちゃったんだけど、それは、なりたいとかなりたくないというレベルの話ではなくて、習得すること自体できない人が多いの。そんな中で貴方は貪欲に修行して、メキメキと上達したわ。まるで昔の弟子だったフォンダンちゃんの様だったわ。」
これはローラスにとって最高の誉め言葉ですね。なにせ、あの天才魔法剣士に似ているみたいなことを言われている訳ですから、ニヤケ顔が溢れてしまっています。
「それから、サーシャ。貴女に関しては私は、何も言えないわ。」
「えーっ!どうしてですか師匠。」
「うーん説明しにくいんだけど、サーシャは私が思っているよりも大きなものを背負っているように思えるのよ。もしかしたら後世に名を残す偉大な魔法剣士になるかも知れないし、全くの無名で生涯を終えるかもしれない。」
おっと、これは一体どう捉えればよいのでしょうか。僕もサーシャ様もグラノールさんの言いたい事を理解すべく真剣に話しに耳を傾けます。
「私も長いこと生きているから、自分が教えた子たちの将来像がなんとなく見えるのよ。でも、貴女に関しては全く見えないの。こんなことは生まれて初めてよ。」
「大丈夫ですよ師匠。私は大魔法剣士になります。」
なんとまあ、ポジティブなサーシャ様でしょうか。僕はグラノールさんの言葉が恐ろしかった。ですが、本人が前向きなので良いでしょう。
「何にせよ二人とも、私の大事な愛弟子です。もし困った事があったならいつでも来なさい。恐らく貴方たちが私の最後の弟子になると思うわ。私は二人の活躍をいつも祈っているわね。」
こうしてサーシャ様の修行は終わりました。
しかし魔法剣士としては、これからがデビューです。
これまでとは違う旅が僕たちを待ち受けていることでしょう。
ともあれ、グラノールさんには感謝感謝です。
僕の大事なサーシャ様を立派に育て上げて頂いた、ご恩に報いる為にも、これからが勝負ですね。
僕は気持ちを新たに致しました。
まあ、僕が張り切っても意味ないですけどね。
僕はすっかりここが気に入りました。
毎日が昼寝日和なのですよ。最高です。
サーシャ様とローラスはグラノールさんの厳しい特訓に一年間耐え抜きました。
「燃え盛れ、フレイムソード!」
「氷剣アイスピック!」
お見事です。まさかサーシャ様が、ここまで魔法剣を使えるようになるなんて思ってもみませんでした。
ローラスなんかは、どうでもよいのですが、あの我慢のきかないサーシャ様が、一年もの間よく辛抱したと思います。
涙がでてきそうですよ、本当に。
「いいわ。二人とも合格よ。」
サーシャ様とローラスは顔を見合わせ笑みをこぼしました。
何かイラッとしますね。
きつい修行に耐えた者同士ですから仕方ありませんがね。
「やった。これでようやく次のステップにいけるのね。もう、この一年フレイムソードばかりやらされてたから死ぬかと思っちゃった。」
「それは俺も同じだ。くる日もくる日もアイスピックばかり。夢にまで出てきたんだぜ。」
「それで師匠、次は何をやるんですか?」
サーシャ様の言葉にグラノールさんは驚くような素振りを見せました。
そして、
「次って?これで終わりよ。あなたたちは無事に卒業よ。おめでとう。」と、言いました。
「ち、ちょっと待っていてください。まだフレイムソードしか使えないですよ、私。」
「俺だってようやく二つ目のの魔法剣アイスピックを習得しただけですよ。もっとこう、色んなバリエーションを教えてもらわないと。魔法剣士はバリエーションの多さが売りなんですから。」
これには僕も少し驚きました。
確かに二人とも一端の魔法剣士レベルには到達したでしょう。
しかしながら、まだまだやることは山のようにある様に思えます。
本当に、これでグラノールさんの修行は終わりなのでしょうか?
「二人とも卒業よ。魔法剣士としての基礎はできたわ。あとは実戦あるのみよ。いいこと、魔法剣の可能性は無限よ。創造力を高めなさい。そうしてそれを具現化するの。それを幾度も繰り返して魔法剣士としての力をつけるのよ。」
サーシャ様もローラスも、いまいち理解できないでいる様子でした。
もちろん僕にも、さっぱり分かりません。
「仕方ないわね、例えを見せてあげるわ。ここに刃折れの剣があるわ。よく見てなさい――レイブレイド!」
ぽっきりと折れた剣の先から光の刃が伸びてきました。
「おお!」
「おお!」
サーシャ様とローラスは目が点になって驚いていました。
「普通の剣士ならば戦いの最中に刃が折れてしまっては、もうお手上げよね。でも魔法剣士ならば、この通り。まだまだ戦えるわ。なんなら、その辺に落ちている木の枝だって武器になる。もちろん耐久性がないから実戦では使えないけど、いざとなれば身の回りにある物全てが使える魔法剣士は窮地に陥っても工夫次第では降参なんてことにはならないのよ。」
グラノールさんの言っていることはもっともです。
その知恵をつけるためには実戦を積み重ねていくより他ありません。
なにはともあれ、ひとまずはお疲れさまでした、ですね。
「さあ、今日は奮発して、お肉祭りよ。」
その夜、僕たちはグラノールさんの自慢の料理を囲みディナーを楽しみました。
「二人共、よく私の修行に耐えたわね。」
サーシャ様とローラスは嬉しそうに頷きました。
「最後に私から総括して助言するわ。」
二人は緩んだ顔を引き締めてグラノールさんの言葉を待ちました。
「まず、ローラスちゃん。さんざん小言を言ってきたけど、貴方は、きっと優れた魔法剣士になるでしょう。近年においては魔法剣士になりたいという人がめっきり減っちゃったんだけど、それは、なりたいとかなりたくないというレベルの話ではなくて、習得すること自体できない人が多いの。そんな中で貴方は貪欲に修行して、メキメキと上達したわ。まるで昔の弟子だったフォンダンちゃんの様だったわ。」
これはローラスにとって最高の誉め言葉ですね。なにせ、あの天才魔法剣士に似ているみたいなことを言われている訳ですから、ニヤケ顔が溢れてしまっています。
「それから、サーシャ。貴女に関しては私は、何も言えないわ。」
「えーっ!どうしてですか師匠。」
「うーん説明しにくいんだけど、サーシャは私が思っているよりも大きなものを背負っているように思えるのよ。もしかしたら後世に名を残す偉大な魔法剣士になるかも知れないし、全くの無名で生涯を終えるかもしれない。」
おっと、これは一体どう捉えればよいのでしょうか。僕もサーシャ様もグラノールさんの言いたい事を理解すべく真剣に話しに耳を傾けます。
「私も長いこと生きているから、自分が教えた子たちの将来像がなんとなく見えるのよ。でも、貴女に関しては全く見えないの。こんなことは生まれて初めてよ。」
「大丈夫ですよ師匠。私は大魔法剣士になります。」
なんとまあ、ポジティブなサーシャ様でしょうか。僕はグラノールさんの言葉が恐ろしかった。ですが、本人が前向きなので良いでしょう。
「何にせよ二人とも、私の大事な愛弟子です。もし困った事があったならいつでも来なさい。恐らく貴方たちが私の最後の弟子になると思うわ。私は二人の活躍をいつも祈っているわね。」
こうしてサーシャ様の修行は終わりました。
しかし魔法剣士としては、これからがデビューです。
これまでとは違う旅が僕たちを待ち受けていることでしょう。
ともあれ、グラノールさんには感謝感謝です。
僕の大事なサーシャ様を立派に育て上げて頂いた、ご恩に報いる為にも、これからが勝負ですね。
僕は気持ちを新たに致しました。
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