最強の女戦士ここにあり

田仲真尋

文字の大きさ
43 / 132

truth

しおりを挟む
「ピート、これはいったい?」


この状況を全て説明する余裕などありません。

僕はサーシャに簡潔に伝えました。


「サーシャ様、こいつは魔物です。村の人々は、まだ生きているそうですよ……たぶん。」


「――よく分からないけど、要はこいつを倒せばいいのね。」


「正解。」


何とか伝わったみたいで、僕はホッと胸を撫で下ろしました。

しかし、サーシャ様がフォックスに勝てるのか?という問題は何も解決していません。いや、恐らく勝てないでしょう。

僕はサーシャ様がフォックスと戦っている間に作戦を練ることに集中しましょう。


「やっと真打ちのお出ましか。」


フォックスは楽し気にサーシャ様を見て言いました。

この時、僕はフォックスの言葉に違和感を覚えました。

やはり、さっき僕に語った動機は嘘だったのでしょう。

目的は、やはりサーシャ様の瞳。もしくはサーシャ様自身。


「燃え盛れ剣フレイムソード」


サーシャ様は魔法剣を発動して、すかさずフォックスへと攻撃を始めました。

燃え盛る炎が宿る剣が振られる度に、炎の音と余韻が残響のようになり、フォックスは間合いを惑わされているようで防戦一方です。


「面白い。いいぞ、もっとだ。もっとお前の力を見せろ、サーシャよ。」


フォックスは反撃に出れないというよりは、出ないだけみたいですね。つまり、まだまだ余裕があるということでしょう。


「馬鹿にしてるわね。だったら――。」


サーシャ様は、魔力を一気に増幅させていきます。その魔力は、とても強大なものでした。

しかし、魔法剣は魔力を維持していかなければなりません。そのレベルの魔力をずっと継続して放出することができるでしょうか。


「私のフレイムソードの進化版を見せてやるわ。」


サーシャ様は、魔力を更に上げていきます。


「サーシャ様、それ以上は――。」


「焼き尽くせ、不死鳥フェニックス」


サーシャ様の剣に宿る炎は、まるで不死鳥のような形態に変化しました。そして、その魔力の塊のような不死鳥は羽ばたき、フォックスを捉えました。


「終わりだ。」


ボンッ!


まるで大爆発を起こしたかのようにフォックスは、サーシャ様の不死鳥に飲み込まれていきました。

どうやら、これで勝負ありのようですね。しかし、いつの間にあんな新技をあみだしていたのでしょう。僕はサーシャ様を真底見直しました。


「サーシャ様、さすがです。僕はサーシャ様が勝つって最初から信じていましたよ。」


だが、サーシャ様は戦闘体制を崩しません。


「まだよ。」


僕は、ぞくりと背筋に寒気を感じました。

そして、振り返って驚きました。そこには、涼しい顔をした、フォックスが無傷のまま立っていたからでした。


「素晴らしい、さすがだ。だが――。」


フォックスは恐ろしいスピードでサーシャ様の目前まで迫り、反撃の余地も与えぬまま、サーシャの細い首を片手で締め上げ宙に浮かせました。


「サーシャ様!」


僕はすぐさま駆け寄ろうとしました。

フォックスは、こちらを見向きもせずにもう片方の手を僕に向けました。

すると、何か見えない衝撃波のようなものが僕を襲いました。

僕は後方へ大きく吹き飛ばされてしまいました。


「お前の力はこんなものではない。その、未完成なままのパープルアイズを早く覚醒させよ。」


「な、なんのこと?」


サーシャ様は首を捕まれたまま、苦しそうに言いました。


「まさかお前、自分でコントロールできないのか?」


フォックスは初めて驚いた表情を見せた。


「ならば私が呼び起こしてやろうぞ。」


フォックスの禍禍しいオーラが更に濃くなって、辺り一面を覆い尽くしました。

すると、サーシャ様に異変が。

今まで苦しそうに、もがいていたサーシャ様の動きがピタリと止んでしまいました。逝ってしまわれたのでしょうか。


「……なせ……。」


何かを口にしましたね。良かった生きているようです。


「離せ下郎!」


何やらサーシャ様の雰囲気が変です。

僕は、その変化にすぐに気づきました。

それは両目の色です。

サーシャ様は、片方が赤くもう片方が青い、いわゆるオッドアイでした。

しかし、今は両目が濃い紫に変わっているではありませんか。

しかも、何やら口調にも変化が出ています。

――素敵です。しびれますね。


「ふっ、ようやく覚醒したかと思えば私を下郎呼ばわりか。図に乗るな。」

ふと見ると、今まで地面から少し宙に浮いていたサーシャ様が、地に足をつけています。

だが、フォックスの腕はまだ、しっかりサーシャ様の首を掴んでいます。


「これは驚きだ。いつの間に私の腕を切り落とした?」


サーシャ様は、自分の首を掴む、フォックスの腕を外し、地面へと叩きつけました。

僕には勿論、腕を切られた当の本人のフォックスですら気づいていないとは、いったいどうやったのでしょう。

しかし、フォックスには焦りなどありませんでした。これまでと同様、余裕の表情を崩しません。

そして、またしても切れた腕を再生させようとしました。


「無駄だ。パープルファイア。」


サーシャ様の剣にも変化ありです。

これまでの激しい赤く燃え上がる炎が、燻って燃えるような、弱いですが禍禍しい紫色の炎に変わっているではありませんか。


その炎がフォックスの切られた腕の傷口に着火しました。


「くっ!これは?修復ができない。」


今度こそフォックスは焦った顔を見せました。

しかも、その紫の炎は消えるどころか徐々にフォックスの全身を覆うように静かに広がっていきました。


「な、なんだこの火は、消えぬ。」


「これで終わりだ。」


「ぐわぁぁあ!」


やりました!これでフォックスは焼き尽くされることでしょう。


「――なんてな。今日はここまでだ。私の任務は果たされた。また、会おうぞ、サーシャよ。」


まさかの展開でした。全身を炎に焼かれても生きているとは、もはや僕の想像を越えた生物です。

何にせよ、今回はサーシャ様の勝ちです。あんな化け物を退かせただけでも、凄いことです。


「やったあ!やりましたね、サーシャ様!」


僕はサーシャ様と勝利のハイタッチをしようと駆け寄りました。


「貴様は、人間か。人間風情が気安く近づくな。」


「サ、サーシャ様!?」


突然、サーシャ様は僕に対して剣を振り上げました。

僕のことを判っていないのでしょうか。

僕は力がフッと抜けて、その場に尻もちをつきました。


「サーシャ様、やめてぇぇえ!」


辺りに僕の悲鳴に近い声が響き渡りました。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます

天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。 王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。 影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。 私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...