最強の女戦士ここにあり

田仲真尋

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僕たちとザラス兵の戦いは、すぐさまスタートしました。

ただハラスメントとサーシャ様はまだ剣も抜いていません。

まずは前座である僕たちの戦いですね。


まずは僕が相手の兵士に斬りかかりました。

ターゲットを決めて一人ずつ倒していきましょう。

僕の先制攻撃に反応が遅れた兵士Aは動けません、まずは一人です――と、思った矢先でした僕の側面から剣が襲いかかってきました。


「うわっ!」


僕は攻撃を止め、寸前で避けました。

攻撃を仕掛けてきたのは、当然もう一人の兵士Bです。


「ふう、危なかった。」


これは完全に油断です。


「ねえピート、魚には塩を振ったほうがいいよね?」


この戦場に似つかわしくない質問に僕はちらっ、と横目で見てみました。

すると、魚を持ったシエルさんがいました。


「シ、シエルさん?戦いの最中では?」


「もう終わったよ。お前はいつまで戦ってるんだ、キャハハハ。」


嘘でしょ?戦いは始まったばかりですよ。

ちょっとだけ確認のため敵から視線を逸らすと、そこにはザラス兵士が二人横たわっていました。

いったいどんな戦い方をすれば、そんなに簡単に倒せるのでしょうか。

これは、僕も急いで片付けねばなりませんね。


「超音速スーパーソニック」


まずは兵士Aに攻撃すると見せかけてからの兵士Bに仕掛けました。

すると今度は兵士Aが横から攻めてきます。

しかし、それはお見通しです。僕は高速で更にフェイントを入れていきます。

そして攻撃を仕掛けた兵士Aの攻撃を寸前で避けました。その鋭い攻撃は勢い余って兵士Bに直撃しました。

唖然とする兵士Aと味方からの不意討ちで倒れる兵士B。

その隙に僕は兵士Aに襲いかかりました。


「隼ファルコン」


「お、おのれ……。」


これで僕の方も片付きました。

今回のザラスの二人は前回戦ったザラスの三人より強かった気がします。

そう考えるとサーシャ様の相手、ハラスメントは更に強いのでしょうか。できればお手合わせしてみたいものですが、あれはサーシャ様の獲物です。

僕はシエルさんと魚でも焼きながら、じっくり観戦させてもらうことにしましょう。


「本当に役に立たぬ屑ばかりだな。俺が直々に相手しなきゃならんとはな。お前ら光栄に思え。ザラスの副総統である、このハラスメントが貴様らを地獄へ送ってやる。」


なんと、あのパワハラ男はザラスのお偉いさんでしたか。

この間の総統であるアイスの次に偉いことになりますね。


「御託はいいから、さっさと始めましょうか――フレイムソード!」


サーシャ様は、やる気満々のようですね。

ハラスメントは正統派の剣を一本持つ、ノーマルタイプの剣士みたいです。

しかし、その腕はどの程度なのか想像がつきません。

きっと凄腕なのでしょうけど。


「本当に魔法剣士なんだな。しかも奇遇にもお互い炎の魔法剣が得意のようだ。」


もしかして、ハラスメントは――。


「フレイムソード!」


なんと!?

ハラスメントも魔法剣士でしたか。

これには驚きました。しかし、それはにプラスアルファにはなりませんよ。サーシャ様に魔法及び魔法剣は効きませんのでね。

逆にサーシャ様の魔法剣は剣技の不足を補うことができます。

どちらが有利かなんて僕には分かりかねますが。


そして二人の剣が交わります。その熱気はこちらまで伝わってきました。

炎の勢いは互角くらいでしょう。


「くそっ!」


あまりの熱気にハラスメントは一旦、後方へ退きます。

一方のサーシャ様は、平然としておられました。魔法が通じないって便利ですね。

これは剣士としての腕とは関係なく、あっさりと勝負がつくかもしれません。


「くらえ、火玉!」


ハラスメントは剣の先端に拳程度の大きさの火の玉を発生させました。その玉が勢いよくサーシャ様にむけて放たれました。

しかも、それは単発ではありません。おびただしい数の火の玉を発射しました。


サーシャ様はその玉を剣で弾いていきます。

しかし数が多い。サーシャ様も次第に反応が遅れていきます。


「サーシャ様。それ魔法ですから弾かなくてもよいのでは。」


僕のアドバイスにサーシャ様は、ようやく気づいた様子です。

まったく、いい加減自分のことは自分で管理してもらいたいですよね。

サーシャ様は余裕の表情で構えを止めました。

当然、ハラスメントの火玉がサーシャ様に当たりました。


「――きゃあ!」


これは?

魔法の効かないサーシャ様が悶絶するように膝をついてしまいました。

僕はシエルさんに確認してみました。


「あれ魔法ですよね?」


「うん、あれは魔法だよ。見れば分かるだろ。」


では、どうしてサーシャ様はダメージを負ったのでしょう。


「ワハハハ。どうした?なんで魔法攻撃なのに傷を負ったのか不思議か?」


一旦攻撃を止めたハラスメントは勝ち誇った顔で、サーシャ様を見下していました。


「貴様に魔法が通じないことくらい、とっくに知っている。だからな、俺は頭を使わせてもらったんだ――これだよ。」


ハラスメントが手に握っていたのは、石ころでした。


「これを火玉の核として攻撃したのさ。当然、火玉自体は効かないが、高速で発射された石は、お前を膝まづかせるには充分だったな。」


なるほど。火玉を発射させる直前に石ころを混ぜていたのですか。シンプルですが効果的ですね。

やはり事前に情報があれば、いくら魔法が効かないとはいえ、対策は簡単に立てれちゃいますね。


「まだまだ、楽しませろよ。お嬢ちゃん。」


ハラスメントは素早く動きサーシャ様の周りをぐるりと一周回りました。

するとサーシャ様を取り囲むように炎が円状に燃え上がりました。


「熱っ!」


これは地面を燃やしているのでしょうか。

これだと確かに魔法の炎ではありません。魔法の炎によって燃えている地面です。

しかし、その発想もさることながら、地面の土を燃やせるとは恐ろしい男です。


「ゆくぞ、火蛇!」


サーシャ様を取り囲んだ炎が勢いよく回転し始めました。

そして、その円は面積を徐々に狭めていきます。回転の風圧が中心のサーシャ様に向いていきます。このままでは、まずい。


「くそっ!」


サーシャ様は炎の熱気に耐えきれず腰を屈めます。


「サーシャ様、駄目です!」


僕が声を上げた時は、既に遅かった。

サーシャ様は上方から脱出しようと、高く飛び上がりました。

しかし、ハラスメントはまさにその時を狙っていました。


サーシャ様と同時に飛び上がったハラスメントは剣で横一閃。


「目玉だけではなく、その首ごと頂こう!」


ところが、首を斬りにきたハラスメントの剣をサーシャ様は、なんと空中で柔軟に体を反らせて避けました。


「なに!」


これにはハラスメントも驚きの顔をしていました。


「なんと柔らかい奴だ。まるで蛸だな、貴様は。」


「なっ!?失礼な男だ、こんな美女に蛸だなんて。許さないわ。」


サーシャ様が蛸……ワハハハ!

つい想像してしまいました。確かにちょっと似ているかも。

なんてことを考えていると、サーシャ様から殺気を纏った視線を感じました。


しかし、このハラスメントという男、厄介ですね。これでは勝てないかもしれません。


すると、これまで黙って観戦していたシエルさんがサーシャ様の元へと歩いていきます。

おお!選手交代でしょうか?


「この戦いはサーシャの負けよ。」


「な、なに言ってんのよシエル。私はまだやれる。」


「いいえ、このまま戦えば貴女の首が飛んじゃうわ。」


「ほう、そこのお姉ちゃんが賢いな。それで、どうしようと言うんだ?見逃してくれとでも頼むか、クックックッ。」


確かに、このまま戦ってもサーシャ様が勝てる要素は全くありません。


「私は譲らないわよ、シエル。」


「誰も代わってとは言ってないでしょ。少しだけ力を貸してあげるのよ。貴女もこんな所で死にたくはないでしょ?」


そのシエルさんの言葉にサーシャ様は反論できませんでした。

もしかしたらサーシャ様本人が一番、力の差を感じていたのかもしれません。


「分かったわ。で、どうすればいいの?」


「よし、お利口さんねサーシャ。まずは、その魔法剣を解除して。」


サーシャ様はフレイムソードを解きました。


「水風船ウォーターバルーン」


なんとシエルさんはサーシャ様の剣に魔法をかけました。

すると剣は水の膜を張りプルプルと震えています。


「これでオッケー。あとは頑張ってね。」


シエルさんは少し後ろからサーシャ様の剣に魔力を送り続けました。

しかし、これは驚き以外の何物でもありません。

本来魔法剣は直接魔力を込めていくものです。それだけでも大変でしょうけど、それを継続しなければなりません。

だがシエルさんは、それを間接的にこなしているのです。

シエルさんは僕の想像を遥かに越えた魔法使いなのかもしれません。


「状況は何も変わらぬ!」


ハラスメントは怒りに任せて剣を振り下ろしました。

それをサーシャ様は剣で防ぎました。


シューッ!


辺りに白煙が巻き起こりました。

どうやらハラスメントの炎の剣がサーシャ様の水の魔法剣によって蒸発しているようです。


面食らったハラスメントは隙だらけです。


「もらった!」


サーシャ様の一撃がハラスメントに直撃しました。


ポヨーン!


「へっ?」


サーシャ様の攻撃はハラスメントに当たり弾かれてしまいました。


「ち、ちょっとシエル。これ何よ!?」


「キャハハ、面白かった?」


「あんたね、ふざけてるんじゃないわよ。」


「今度はちゃんとやるから、もう一度攻撃してごらん。」


そもそも、あんな水玉が剣に、まとわりついていたら刺すことも斬ることもできません。どうするのでしょうか。

僕は、じっと見守りました。


「大丈夫なんでしょうね――いくわ!」


半信半疑のままサーシャ様は再び斬りかかりました。


「水の刺ウォーターソーン」


サーシャ様の剣に揺蕩っていた水玉から突如、鋭い刺が無数に飛び出しました。

その刺がハラスメントに突き刺さっていきます。


「ぐわぁあ!」


静かで、のどかな雰囲気に似つかわしくない、ハラスメントの断末魔が響き渡りました。



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