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過去の過ち
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「あれは、私がまだとても若く、力も勢いもあった遠い昔の話しになる。その当時の私には怖いものなど何もなかった。フルガイアではいくつかの勢力に分かれて、日々争いが絶えなかった。」
ディミトリさんの過去の話しには、サーシャ様だけでなく僕も含め、全員が関心がありました。
そして、皆がディミトリさんの物語へと誘われていきました。
「ディミトリ様。今日も快勝でしたな。」
「お前の働きがあってこそだ、アイス。」
「これでまた、フルガイアの統一に一歩近づきましたね。」
「ああ、だが道はまだまだ遠い。これからも宜しく頼むぞ、アイス。」
フルガイアには、これまで国王など存在していません。
そもそも、国を統べるという概念がないのです。
未だかつて誰も成し遂げたことのない偉業にディミトリさんは、チャレンジしていたのでした。
「ディミトリ様、アランが攻めてきました。」
「――アランか。返り討ちにしてくれよう。」
アランというのは、当時のフルガイアでも指折りの猛者でした。
しかも数が違います。ディミトリさんの率いる軍の、およそ十倍ほどの数でした。
それでもディミトリさんたちは勇敢に戦い、そして勝利を収めました。
「やりましたね、あのアランに勝ちましたよ、ディミトリ様。」
誰もが勝利の美酒に酔いしれました。
ですがディミトリさんは、その辛勝に危機感を覚えました。
確かにアランは強敵でしたが、他にもアラン以上の力を持った勢力があることを知っていました。
そう考えているのがディミトリさんの他に、もう一人いました。
――アイスです。
「ディミトリ様。我々が勝ち続けるには、もっと力が必要です。このままでは、いずれ敗北する時がくるでしょう。」
「分かっている。だが、どうすれば力を手に入れれる?何か方法でもあるのか?」
「――ない、ことはありません。一つだけ、方法があります。」
「なんだ?」
「――パンドラへ行くのです、ディミトリ様。」
「正気か、アイス。あそこは足を踏み入れてはならない、禁断の地ぞ。」
パンドラについては、フルガイアの民にとっても謎に包まれた場所。
人間界では、カモミール姫が魔界の一つという認識を示していましたが、それはどうやら的外れのようです。
「分かっております。ですが、こういう言い伝えもあります。パンドラに認めらし者は力を与えられる、と。私は、ディミトリ様が支配するフルガイアしか見たくはないのです。」
「――私は、悩みに悩みぬいてアイスの提案を受け入れることにした。そしてパンドラへと足を踏み入れたのだ。」
「どんな所なの、パンドラは?」
「……何もない、虚無の世界だった。いや、その時の私には何も見えなかっただけだろう。私はすぐに気を失い、気がつけばパンドラの外へと放り出されていた。」
つまりは、ディミトリさんはパンドラに拒絶されたということなのでしょうか?
「その時、私は大事なことに気づいた。それは、私の力が大きく損なわれているということだった。私は愕然とした。これでもう、フルガイア統一など夢のまた夢だ。私は失意のまま仲間の元へ戻った。力を失った私からは多くの仲間が去っていった。もちろんアイスもそうだった。だが、驚くことに力のない私の元に残る者もいた。当時のフルガイアは力が全てだった。それだけに、私は残ってくれた同士たちだけでも守ろうと、ここにキリエスという都市を築いたのだ。そして、ここだけは死んでも守ると私は自分に誓ったのだ。」
力を失っても、ついてくる者がいるということは、ディミトリさんの心を敬っているのでしょう。
やはり、上に立つ者には力だけでなく、そういったものが必要なのでしょうね。
「キリエスが無事に成長を遂げ、ある程度平穏な日々を手に入れたのを、見計らって私は人間界へと足を運んだ。目的はアイスを探すためだった。情報では、人間界へ旅立ったと聞かされていたからだ。私は彼にキリエスを見て欲しかった。だが、アイスの姿は見つからなかった。そんな折、私はマリアと知り合い、そしてサーシャを授かった。それから一旦はフルガイアへと帰還したが、しばらくしてマリアを喪った私はサーシャと共に、人間界へと戻った。マリアの家族に彼女の死を伝えるためだった。私は、失意のあまり、フルガイアへ帰るのをやめ、人間界で生きていこうとしていた。だが、数年後、フルガイアよりの使者が来て、キリエスが驚異にさらされていることを知り、私はフルガイアへ戻ることを決意したんだ。そして、私はダマンとの戦いに敗れ、この世を去ったということにしたんだ。」
「どうして私も連れて行ってくれなかったの?」
「フルガイアでの生活は戦いの日々だったからだ。それに人間界で滞在していた、シグレ島の者たちは私たちにとても親切だった。ここならサーシャも平穏に生きていけるのでは、ないかと思った。無論、私はサーシャと共に暮らしたかった。だが、それ以上に危険にさらしたくなかった。」
子供を思っての行動だったのですね。
僕としては、そうしてくれて良かったと心から、そう思いました。
お陰でサーシャ様と知り合えたのですから。
「私が戻って、少し経つとキリエスの危機も一旦は去った。そこで、もう一度人間界へサーシャの様子を見に行こうとしたんだ。だが、私の身に異変が起こっていた。パンドラで失った力が、更に奪われていたんだ。理由は分からないが、私にはもう人間界まで行く力すら残っていなかった。おそらくフルガイアを離れれば私は生き絶えるしかないだろう。仕方がなく、フォックスを人間界へ送り、サーシャの様子を伺わせたというわけだ。これが私の真実だ。サーシャ、一人にしてしまい本当に悪かった。」
その後、サーシャ様はシグレ島にて覚醒して、断片的な記憶を失い、僕と出合って今に至るというわけですね。
「本当に勝手ね。でも……生きていてくれて良かった。だから、許してあげる。」
サーシャ様は、なんだかんだ言っても父上の事を愛しているのだと、深く感じました。
何だか場の空気も和み、皆の質問がちょうど一段落した時でした。
ディミトリさんの手下の方が慌てるような素振りで、僕たちの元へ走ってきました。
「ディミトリ様、ついに動きました。」
ディミトリさんの過去の話しには、サーシャ様だけでなく僕も含め、全員が関心がありました。
そして、皆がディミトリさんの物語へと誘われていきました。
「ディミトリ様。今日も快勝でしたな。」
「お前の働きがあってこそだ、アイス。」
「これでまた、フルガイアの統一に一歩近づきましたね。」
「ああ、だが道はまだまだ遠い。これからも宜しく頼むぞ、アイス。」
フルガイアには、これまで国王など存在していません。
そもそも、国を統べるという概念がないのです。
未だかつて誰も成し遂げたことのない偉業にディミトリさんは、チャレンジしていたのでした。
「ディミトリ様、アランが攻めてきました。」
「――アランか。返り討ちにしてくれよう。」
アランというのは、当時のフルガイアでも指折りの猛者でした。
しかも数が違います。ディミトリさんの率いる軍の、およそ十倍ほどの数でした。
それでもディミトリさんたちは勇敢に戦い、そして勝利を収めました。
「やりましたね、あのアランに勝ちましたよ、ディミトリ様。」
誰もが勝利の美酒に酔いしれました。
ですがディミトリさんは、その辛勝に危機感を覚えました。
確かにアランは強敵でしたが、他にもアラン以上の力を持った勢力があることを知っていました。
そう考えているのがディミトリさんの他に、もう一人いました。
――アイスです。
「ディミトリ様。我々が勝ち続けるには、もっと力が必要です。このままでは、いずれ敗北する時がくるでしょう。」
「分かっている。だが、どうすれば力を手に入れれる?何か方法でもあるのか?」
「――ない、ことはありません。一つだけ、方法があります。」
「なんだ?」
「――パンドラへ行くのです、ディミトリ様。」
「正気か、アイス。あそこは足を踏み入れてはならない、禁断の地ぞ。」
パンドラについては、フルガイアの民にとっても謎に包まれた場所。
人間界では、カモミール姫が魔界の一つという認識を示していましたが、それはどうやら的外れのようです。
「分かっております。ですが、こういう言い伝えもあります。パンドラに認めらし者は力を与えられる、と。私は、ディミトリ様が支配するフルガイアしか見たくはないのです。」
「――私は、悩みに悩みぬいてアイスの提案を受け入れることにした。そしてパンドラへと足を踏み入れたのだ。」
「どんな所なの、パンドラは?」
「……何もない、虚無の世界だった。いや、その時の私には何も見えなかっただけだろう。私はすぐに気を失い、気がつけばパンドラの外へと放り出されていた。」
つまりは、ディミトリさんはパンドラに拒絶されたということなのでしょうか?
「その時、私は大事なことに気づいた。それは、私の力が大きく損なわれているということだった。私は愕然とした。これでもう、フルガイア統一など夢のまた夢だ。私は失意のまま仲間の元へ戻った。力を失った私からは多くの仲間が去っていった。もちろんアイスもそうだった。だが、驚くことに力のない私の元に残る者もいた。当時のフルガイアは力が全てだった。それだけに、私は残ってくれた同士たちだけでも守ろうと、ここにキリエスという都市を築いたのだ。そして、ここだけは死んでも守ると私は自分に誓ったのだ。」
力を失っても、ついてくる者がいるということは、ディミトリさんの心を敬っているのでしょう。
やはり、上に立つ者には力だけでなく、そういったものが必要なのでしょうね。
「キリエスが無事に成長を遂げ、ある程度平穏な日々を手に入れたのを、見計らって私は人間界へと足を運んだ。目的はアイスを探すためだった。情報では、人間界へ旅立ったと聞かされていたからだ。私は彼にキリエスを見て欲しかった。だが、アイスの姿は見つからなかった。そんな折、私はマリアと知り合い、そしてサーシャを授かった。それから一旦はフルガイアへと帰還したが、しばらくしてマリアを喪った私はサーシャと共に、人間界へと戻った。マリアの家族に彼女の死を伝えるためだった。私は、失意のあまり、フルガイアへ帰るのをやめ、人間界で生きていこうとしていた。だが、数年後、フルガイアよりの使者が来て、キリエスが驚異にさらされていることを知り、私はフルガイアへ戻ることを決意したんだ。そして、私はダマンとの戦いに敗れ、この世を去ったということにしたんだ。」
「どうして私も連れて行ってくれなかったの?」
「フルガイアでの生活は戦いの日々だったからだ。それに人間界で滞在していた、シグレ島の者たちは私たちにとても親切だった。ここならサーシャも平穏に生きていけるのでは、ないかと思った。無論、私はサーシャと共に暮らしたかった。だが、それ以上に危険にさらしたくなかった。」
子供を思っての行動だったのですね。
僕としては、そうしてくれて良かったと心から、そう思いました。
お陰でサーシャ様と知り合えたのですから。
「私が戻って、少し経つとキリエスの危機も一旦は去った。そこで、もう一度人間界へサーシャの様子を見に行こうとしたんだ。だが、私の身に異変が起こっていた。パンドラで失った力が、更に奪われていたんだ。理由は分からないが、私にはもう人間界まで行く力すら残っていなかった。おそらくフルガイアを離れれば私は生き絶えるしかないだろう。仕方がなく、フォックスを人間界へ送り、サーシャの様子を伺わせたというわけだ。これが私の真実だ。サーシャ、一人にしてしまい本当に悪かった。」
その後、サーシャ様はシグレ島にて覚醒して、断片的な記憶を失い、僕と出合って今に至るというわけですね。
「本当に勝手ね。でも……生きていてくれて良かった。だから、許してあげる。」
サーシャ様は、なんだかんだ言っても父上の事を愛しているのだと、深く感じました。
何だか場の空気も和み、皆の質問がちょうど一段落した時でした。
ディミトリさんの手下の方が慌てるような素振りで、僕たちの元へ走ってきました。
「ディミトリ様、ついに動きました。」
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