最強の女戦士ここにあり

田仲真尋

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パープルアイズ発動

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遂にモルドスとディミトリさんの戦いの火蓋がきって落とされました。

先手をとったのはディミトリさんです。

既にその瞳は紫色に変化しています、パープルアイズです。

あの瞳は特別な力を発揮するためのトリガーのようなものでしょう。


まずはなんといっても身体能力が飛躍的にアップ。

動体視力も格段に上がるようなので、身体能力アップも相まって物凄い反射神経を生み出し、敵の攻撃を避け懐へと一瞬で潜り相手をしとめる。

更には敵の攻撃魔法をも無力化してしまい、己の魔力を引き上げるという反則的な瞳なのです。


「それがパープルアイズか。その目――我によこせ!」


モルドスは空を掴む仕草をみせ、そしてそれをまるで剣を振り下ろすようにディミトリさんへ攻撃をしかけました。


「――!?これは。」


その瞬間ディミトリさんは、モルドスとの間合いを一旦取り直すように足を止め、後方へと飛びました。

すると次の瞬間、今まで何も持っていなかったモルドスの手に剣らしいものが突如として出現したではありませんか。

その剣は寸前でディミトリさんの鼻先を掠めて地面を叩きました。


スドン!


まるで爆発でもしたかのように地面がえぐれているではありませんか。

あんなものもろに喰らえば体が木っ端微塵です。


「な、なんだその剣は!?」


ディミトリさんが驚くのも無理はありません。

なんせその剣は僕らが知る剣の概念を覆すような、異形の姿をしていたからです。

刀身からは無数の細い枝のようなものが生えているようでした。

更にその枝のようなものは自我を持ったようにウネウネと動いているではありませんか。

まったく気持ち悪い剣です。


「我が剣の一つ、ゴブリンソードだ。」


「魔獣の剣か。厄介な物をお持ちで――!」


ディミトリさんが再びしかけます。

今度は速度をさらに上げ変則的な動きでモルドスとの距離を縮めていきます。

それをモルドスのゴブリンソードの触手が四方八方からディミトリさんを串刺しにしようと襲いかかってきました。

しかし、それをディミトリさんは完全に捌きながら前へと進みます。


「なんだ、やるではないかディミトリ。ならば――。」


モルドスのゴブリンソードの本当の刀身が形を崩し出しました。

そして今度はその刀身全てが触手と化したではありませんか。

もはや残るは束のみ、これは剣とはさすがに呼べません。

そしてその触手の数はこれまでの比ではありません。

さすがに全てを避け防ぐのは無理があります。

しかし、モルドスへと近づかなければディミトリさんはどうすることも出来ません。


「切っても切っても、また生えてきやがる。だがその再生する、ほんの僅かなタイムラグがチャンスだ。」


「ほう、さすがはかつてフルガイアを統べる野望を持っていた男だ。少し侮りすぎたかもしれぬ。だが、それをどう活かすつもりか見せてもらうぞ!」


ゴブリンソードの触手が一斉にディミトリさん目掛けて伸びていきました。


「魔力をかなり消費するがやむ得まい。」


ディミトリさんは一瞬の間に何やら魔法を唱えました。

魔法使いは一流になればなるほど、魔法の提唱時間が短いとされています。

それを考えれば、刹那的にそれをやってのけたディミトリさんは一流の魔法使いと呼べるのかもしれません。


「聖なるスパイラルスピア!」


ディミトリさんの持つ剣が槍の矛先状に変化して螺旋のように高速で回転し始めました。

どうやらこれは魔法ではなく魔法剣のようです。

驚きました、まさかディミトリさんが魔法剣を使うとは恐れ入りました。


「それで止めれるとでも思っているとは、愚かだ。」


モルドスの言う通り、直線的な部分では強いかもしれませんが、曲線的に襲ってくるゴブリンソードの触手を止めるのは至難の技と言えるでしょう。


「もちろん止めれると思っているさ。」


ディミトリさんの剣が青白く光を放っているようですが、これは一体?

その時でした、なんとゴブリンソードの触手がディミトリさんの剣を掻い潜って完全にディミトリさんを捉えたと思われた瞬間にまるで蒸発したように消滅していくではありませんか。


「もらったぞ、モルドス!」


自分の回りの触手を消滅させながらディミトリさんは一直線にモルドスへと突っ込んでいきます。


「くっ!」


そしてその矛先が遂にモルドスへ到達し貫いた――と、思われましが違いました。


「剣を捨てたか。」


ディミトリさんの言葉通り、モルドスは寸前のところでゴブリンソードを元に戻し、その刃でディミトリさんの攻撃を防御しました。

それと引き換えにゴブリンソードはディミトリさんの一撃で完璧に破壊されました。


「面白い。まだそんな力が残っていようとは驚きだ、ディミトリよ。」


惜しかった。

でもこのペースは非常に良いですよ。

ディミトリさんがモルドスを倒してしまえばこちらの勝利ももう目の前です。


「――ハァハァ……。」


ところがどうも状況は僕が思っているのとは大きく違うようでした。


「どうしたディミトリ。ずいぶんと辛そうではないか。そろそろ終わりにするか。」


「やはり思った以上に消耗が激しい。これはちょっとまずいな。」


どうやらディミトリさんの力の限界が近いようです。

なんとか次の一撃で倒さなければ後がなさそうですね。


「我が三本の剣、第二の剣を披露してやろう。チェイシングアイ。」


またしても新たな剣をモルドスは召喚するように出現させました。

今度の剣は刀身も束も真っ黒な光沢のない不気味なものでした。

そして刀身の根元にはこれまた気色の悪い黄身がかった目玉がついています。


「ではゆくぞ。」


モルドスはそう言い放ったかと思ったら、おもむろに剣をディミトリさんへ投げつけました。


「な、なんだ!?」


ディミトリさんも驚きながらも冷静にそれを弾き返しました。

大きく弾かれた剣は宙を舞いましたが、どうも様子がおかしかった。

突如、剣が引き寄せられるようにまたディミトリさんへ向けて襲いかかったではありませんか。

当然、ディミトリさんは再び弾きますが、三度同じように――いや、それ以上の鋭さで舞い戻ってきます。


「これは剣が意思でも持っているようだ。」


レジェスの言葉に、まさにその通りだと思いました。

一方のモルドスは腕を組んで、その様子をただ見ているだけのようでした。


「それはお前が死ぬまで何度でも貴様を襲う。止めたくばさっきの魔法剣で破壊するしかないぞ、ディミトリ。」


なるほど、その手があった。

しかし、よくよく考えてみればディミトリさんにその余力は残っていないと悟った時、僕は背筋がすーっと凍りつくような感覚を覚えました。

確かにあれをどうにかしなければなりません。

しかしその手立てがなければただ刻まれていく。

待つのは死のみです。

その間にもディミトリさんは激しく襲ってくるチェイシングアイをただ弾き続けています。

ですが明らかに動きが鈍くなっているのを感じます。

現に所々、ディミトリさんの体のあちらこちらから出血が見てとれます。

ディミトリさんはなんとかモルドス本体を叩こうと進みますが、チェイシングアイの猛攻に退くことを余儀なくさせられています。

このままでは、じり貧です。


「今、やるしかないか。」


ディミトリさんの様子が変ですね。

突然、動きを止めてしまったではありませんか。

まさかもう戦う意思がなくなってしまったのでしょうか。


「――サーシャよ。よく見ておくのだ。」

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